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太陽光発電システム、「屋根貸し」に再脚光のワケ

電力各社の参入が相次ぐ
太陽光発電システム、「屋根貸し」に再脚光のワケ

電力各社は再生エネの利用を広げ新たな顧客獲得も狙う

 一般住宅などの屋根を借り、太陽光発電システムを初期費用ゼロで取り付ける「屋根貸し」事業が、再び脚光を浴びている。同事業は2012年の再生可能エネルギーの固定買い取り制度(FIT)開始と同時にソフトバンクやオリックスなどが参入し注目を集めた。一定規模の市場を作ってきたが、19年から電力各社の参入が相次ぐ。電力小売り全面自由化で顧客の獲得競争が激しくなる中、電力会社が目をつけている。

 「屋根貸し」事業はリース事業と似ている。個人顧客が初期費用ゼロで導入可能。顧客は太陽光発電による安価な自家発電を消費しつつ、余剰分は売電する。不足分は電力会社や新電力からの系統電力を使用し、合算料金を支払う。太陽光発電システムは10年後、顧客に無償譲渡される。太陽光発電市場が伸び悩む中、太陽光発電システム会社が販売手法の一つとして活用してきた。

 19年になり、電力会社も同事業に目をつけ相次ぎ参入する。16年4月に電力小売り全面自由化が始まり、新たな顧客獲得が狙いだ。

 大手電力会社でいち早く参入した東京電力グループのTEPCOホームテック(東京都墨田区)は、省エネルギー・リフォーム提案の一環で18年7月にサービスを始めた。「初期費用がネックで導入に悩む顧客ニーズに応えるため事業を始めた」(同社広報)。土屋ホームなどの住宅会社や太陽光発電会社などと幅広く協業する。

 中部電力も19年2月、資本参加する新電力のLooop(東京都台東区)と協業し、中部の営業エリアで屋根貸し事業を始めた。さらに関西電力は京セラと同事業を行う新会社を設立し、関東と中部エリアで今秋にサービス提供する計画だ。

 関電の岩根茂樹社長は「顧客に多くの選択肢を提供し、再エネの利用を広げたい」と協業の狙いを語る。京セラの谷本秀夫社長は「再生エネルギー事業を拡大していく」と、赤字が続く太陽光パネル事業の収益を改善したい考えだ。

 「屋根貸し」事業の契約は10年間が原則。つまり電力会社は10年間は顧客を囲い込めることになる。今後は「新電力や工務店などの参入も増えてくる」(太陽光発電関連会社)。ただ住宅向けのFIT価格は年々下落し、19年度は1キロワット時当たり前年度比約2円減の24円。今後も数円ずつ下がり続ける。

 屋根貸し事業者は売電収入で初期費用分の一部を回収する。年々下がると採算性が悪くなる。新規参入を目指す新電力会社は「事業の決断としてはこの数年が勝負になる」と見ている。
(文=大阪・香西貴之)
日刊工業新聞2019年4月24日

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