ニュースイッチ

課題山積、高揚感が“たこ焼きロボ”開発の支え

コネクテッドロボティクス社長・沢登哲也 ④
課題山積、高揚感が“たこ焼きロボ”開発の支え

たこ焼きロボ「オクトシェフ」

 Dobot(ドボット)という小型の教育用ロボットで試してみて始まった「たこ焼きロボット」のプロジェクト。思いがけない好評を受けて、起業イベントで優勝して仲間や人脈ができた。

 その勢いで「メーカーフェア東京」という展示会に出展できることになった。小型のロボットではさすがにできることが限られていたので、本格的な産業用ロボットを使うことにした。

 とはいっても、自動車の工場にあるような大型の産業用ロボットを使うとなると、あまりに大がかりになり、飲食店や家庭で使う姿はとうてい見えて来ない。そこで、比較的小型ですっきり見える、デンマークのユニバーサルロボットの協働ロボット「UR3」を使うことにした。

 購入すると価格が数百万円と高価なものだが、オリックス・レンテック(東京都品川区)からレンタルすることで、100万円以内のコストに抑えることができた。

 まず、UR3とロボットハンド、カメラの組み合わせだけで、家庭用ホットプレートを使ったたこ焼きシステムを作り上げた。ホットプレートの温度をロボットが手動で調節し、プレート上に油や液を注ぎ、まな板の上のタコを投入し、それを焼き具合に応じてひっくり返していくというシステムで、2カ月弱の準備期間で作った。

 急ごしらえのものだったが、メーカーフェアではたくさんの方に見に来てもらうことができ、それがキリンや日本IBMといった企業の事業共創プログラムに我々が採択されるきっかけになったと思う。

 一方で、調理をするということの難しさが身に染みた。食材の個体差、鉄板の熱のムラ、器具の位置ずれなどにロボットが柔軟に対応しなくてはいけないが、これがとても難しい。

 それまで私は工業品ばかりを相手にしてきたが、扱う対象や環境がこんなにも変化するということはまずありえない。実現するテクノロジーもさることながら、実際にビジネスにしていく上では、飲食業向けの高い生産性、安定性、省スペース性、そして、何はともあれ採算性などチャレンジングな課題が山積していることがわかった。

 とにかく2、3カ月はやってみようということではじめたが、メーカーフェア東京でこの挑戦が非常に価値があるということは、多くの人の反応が物語っていた。これを本気でビジネスとして日本そして世界に広められるのは自分しかいない、なかば勘違いにも似た高揚感をそれからずっと持ち続けている。

 そのようにして私たちの最初の挑戦であるたこ焼きロボット「OctoChef(オクトシェフ)」の開発プロジェクトは始まり、進んでいった。(全8回、毎日掲載)
日刊工業新聞2018年10月12日(ロボット)

編集部のおすすめ