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日本は「ロボットのある日常」のパイオニアになれるか

「ユーザー参加型の“市民革命”が求められている」(本田大阪工大教授)
日本は「ロボットのある日常」のパイオニアになれるか

米ロモティブ製「ロモ」(写真=田山浩一)

 「ロボット革命―なぜグーグルとアマゾンが投資するのか」の著者、大阪工業大学の本田幸夫に聞く。

 ―政府が「ロボット革命」を提唱しロボットに大きな注目が集まる中での発刊となりました。
 「数十年後にサービスロボットの歴史が検証されたとしたら、2015年がターニングポイントになる可能性がある。人工知能(AI)技術は急速に進化し、スマートフォンの音声認識などさまざまな所で使われ始めた。AIを用いるサービスロボットの産業化を今急がないと、欧米や中国などの後塵(こうじん)を拝することになる。日本はこの分野でパイオニアになるべき存在。キャッチアップ型のビジネスモデルは結局はもうからなくなるため避けないといけない」

 ―ロボットの普及に向けた実証実験の重要性を説いています。
 「サービスロボットは先端技術だが、ユーザーは研究者ではなく一般の人たち。使ってみないと分からないことは多い。パナソニック時代、介護施設にロボットを提案し高評価を得たものの、実際には使われなかった経験がある。ロボットは確かに便利だが、現場側では働き方を変えるのに抵抗があったからだ。サービスロボットの導入には職場やコミュニティーのシステム全体を考える必要があり、実証実験がそのためのデータを蓄積する機会になる」

 ―ロボットの“光と影”にも言及しています。
 「ロボットがIoT(モノのインターネット)端末として巨大なビジネスになる可能性は大きい。そこで懸念しているのが、セキュリティーの問題だ。使用状況など各種情報がビッグデータとして蓄積されるため、まずユーザーのプライバシーを守る仕組みが必要。また、ウイルスなどにより暴走する恐れもある。こうしたリスクについて、しっかり議論しないといけない」

 ―このほか国に望むことは。
 「技術開発への投資はもちろん大事。だが、同時にユーザー側への資金的な支援にも力を入れてほしい。でないとロボットを使おうとする人は増えないだろう。単に性能の優れたロボットが完成するだけではロボット革命は成立しない。ユーザー参加型のイノベーションが求められている。私が本書で“市民革命”と呼んでいるのはそのためだ」
 (聞き手=藤崎竜介) 日刊工業新聞2015年03月09日付「著者登場」
 【プロフィル】
 本田幸夫(ほんだ・ゆきお)大阪工業大学教授
 80年(昭55)神戸大工卒、同年日本電装(現デンソー)入社。89年松下電器産業(現パナソニック)入社。モータ社最高技術責任者(CTO)、本社R&D部門ロボット事業推進センター長などを経て、13年から大阪工大教授。大阪府出身。

「ロモ」試行錯誤を繰り返し科学や数学の楽しさ伝える


 小さなロボットがすねたり笑ったり、多彩な動きをする姿を、子どもたちが一心不乱に見つめている。
 
 このロボットは、米ロモティブ製のエデュケーショナルロボット「Romo」(ロモ)。中央のスタンドに「Romo」アプリケーション(応用ソフト)をダウンロードしたiPhoneを取り付け、プログラミングして動作させる知育ロボだ。
 
 メニューの「じっけん室」では、モニターに表示されるアイコンから子どもたち自身で希望の入力を済ませたらスタート。障害物を避けゴールまで無事クリアできた子どもたちは「やったぁ!」と歓声をあげていた。販売元のセールス・オンデマンドマネージャーの小暮武男さんは「プログラムを試行錯誤で繰り返すことで科学や数学の楽しさを感じてくれれば」と話す。
 (文=田山浩一)
 ※日刊工業新聞で「ロボットのある日常」を随時掲載中
日刊工業新聞2015年08月11日1面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
本田教授の著書が発売されたのは昨年の11月。インタビューは今年3月のもの。日本のロボット開発や新しいビジネスへの課題が端的に書かれている。お盆休みの一冊にぜひ。

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