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中小企業の「賃上げ倒産」は防げるか

「防衛的賃上げ」で苦悩
 中小企業が2019年春闘で厳しい対応を迫られている。連合がまとめた同春闘の第2回回答集計結果によると、ベースアップ(ベア)と定期昇給(定昇)を合わせた賃上げ率は、全体の平均で2・13%(前年第2回回答は2・17%)と前年を下回った一方、組合員99人以下の中小企業は2・05%(同1・97%)と前年を上回った。中小は深刻な人手不足を解消しなければ業績が悪化する懸念があり、無理な賃上げに動いている可能性がある。

 日本商工会議所の三村明夫会頭は今春闘について「(中小は)人手を確保するため、生産性が上がっていなくても、賃上げせざるを得ない企業が多くなる。今年だけでなく、来年も続く」と見通す。大手企業は利益還元として賃金を上げるが、中小は事業を支えるための「防衛的賃上げ」と三村会頭は形容する。

 内閣府と財務省がまとめた1―3月期の法人企業景気予測調査によると、国内の景況判断(現状判断)指数は大手企業がマイナス1・9、中堅がマイナス4・9、中小がマイナス13・6と、企業規模が小さいほど厳しくとらえる。本来なら中小は賃上げに動きにくい環境だが、深刻な人手不足に背中を押されているとみられる。

 東京商工リサーチの調べでは、18年4月―19年2月の人手不足関連倒産は前年同期比28・8%増の362件で、3月を残して年度ベースで過去最多を更新している。
日刊工業新聞2019年3月25日

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