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ステアリングをもっと差別化したい!開発された次世代ソフト

日本精工、多様な操舵装置に対応
ステアリングをもっと差別化したい!開発された次世代ソフト

次世代制御ソフトを適用した実験車内部

 日本精工はステアリング(操舵装置)用の次世代制御ソフトウエアを開発した。独自の制御手法を採用し、多様化する操舵装置のタイプを問わず制御できる。車種ごとに操舵感を調整すれば良く、制御ソフトを一から開発する必要がなくなり、工数や費用を削減できる。競争にある自動運転開発では、制御ソフトの高度化に伴い予想される、開発負担増の抑制にも貢献できそうだ。2020年代半ばの実用化を目指す。

 「コモディティー(汎用品)化が指摘されるステアリングで、差別化できる技術の一つだと思っている」。宮崎裕也執行役常務は次世代制御ソフトの可能性に期待を寄せている。

 操舵装置はハンドルを操作してタイヤの向きを変える装置。ハンドル操作をモーターで補助する電動パワーステアリング(EPS)が市場の7割以上を占める。

 EPSでもモーターをハンドル側に設置する「コラムタイプ」と、タイヤ側に設ける「ラックタイプ」があり、補助する力などが異なる。また、ハンドルと前輪の車軸を機械的に接続せず、ハンドル操作とタイヤの向きを独立して制御する「ステア・バイ・ワイヤシステム」なども実用化される。

 日本精工はハンドルを回した角度をセンサーで検出。任意に設定した操舵感に応じて、タイヤの向きを変えるために必要な力をモーターで補助する次世代制御ソフトを開発した。従来はハンドルを回す力に応じて、タイヤの向きを変える力を補助していた。

 次世代ソフトはハンドル以下の機械機構によらず制御でき、多様な操舵装置に対応する。自動車メーカーはタイプに応じて制御ソフトを開発する負担を軽減でき、車種ごとに操舵感覚や品質を作り込む自由度も高まる。操舵装置はギアなどで摩耗するが、次世代ソフトは部品の経年変化が操舵感覚に与える影響を受けにくく、「消費者は良好な操舵感を維持できる」(森堅吏パワートレイン技術開発部副主務)。

 制御ソフトは高度運転支援システムや自動運転技術の進展で高機能化が加速する。車のデジタル化でソフトの更新への対応やセキュリティー対策が求められ、開発工数の増加が予想される。多くの制御ソフトを開発しつつ次世代技術に対応することは難しく、「開発を効率化する一つの方法としても提案してきたい」(山田康久ステアリングR&Dセンター所長)としている。
日刊工業新聞2019年3月22日

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