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【連載】なぜ、企業は不祥事を繰り返すのか? ②アクリフーズの農薬混入事件

**事件の概要
 アクリフーズは、もともと雪印乳業の冷凍食品部門であったが、2003年10月にニチロに買収された。2007年にマルハとニチロが経営統合してマルハニチロホールディングスが誕生すると、そのグループ会社となった。雪印時代からの沿革により乳製品を利用した冷凍食品に強く、冷凍ピザの分野ではトップメーカーであった。

 2013年11月、アクリフーズの群馬工場が製造した冷凍食品に対する異臭苦情が通報され、その後も同様の苦情が続出した。12月27日には外部検査で農薬マラチオンが検出され、意図的な混入事件であることが判明した。捜査の結果、同工場に勤務していた契約社員の甲が偽計業務妨害罪、器物損壊罪等で起訴され、懲役3年6月を言い渡された。
 この事件を受けてホールディングス社長が引責辞職するとともに、群馬工場は長期間にわたって操業停止を余儀なくされた。商品回収の対象は計90品目、回収個数は約630万個に達し、回収関連の特別損失は約50億円に上った。ちなみに、回収対象には、イオン、セブン&アイ・ホールディングスなどのPB(プライベート・ブランド)食品も含まれていた。

監視体制の不備


 犯行の動機は、成果主義の人事制度のもとで給与や賞与が減額されたことに対する不満であった。甲は、2013年10月から11月にかけて製造ラインにたびたび侵入し、ラインを流れる食品計22個に農薬を吹き付けた。犯行に用いた農薬入りの香水スプレー瓶は、作業着の袖口、ズボンの後ろポケット、靴下の中などに隠して持ち込んだ。

 群馬工場では、外部からの不審者の侵入に備えた措置として、夜間・休日の巡回、出入口への監視カメラの設置などの対策を実施していた。また、不注意による異物混入を防止する措置として、洗剤や工具の明示、作業チェックシートの使用、薬剤の施錠管理などの対策も行っていた。
 その一方で、製造ライン間の扉は無施錠で自由に出入りできた上に、従業員が担当外の製造ラインに出入りすることを禁止する社内規定もなかった。また、監視カメラの数はわずか5台で、製造エリア内の死角や要注意箇所には設置していないなど、従業員による意図的な異物混入のリスクに関しては、監視体制が不十分であった。
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
マルハニチロホールディングスのグループ会社、アクリフーズの農薬混入事件を取り上げました。食品に関する不祥事は定期的に発生しているように感じます。 次回はベネッセの顧客情報漏えい事件を取り上げます。

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