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FITの売電価格下落も…太陽光パネル需要が拡大するワケ

エクソル社長・鈴木伸一氏インタビュー
 固定価格買い取り制度(FIT)による売電価格が下落し、国内の太陽光発電市場は停滞している。しかし、太陽光発電システム販売・施工大手のエクソル(京都市中京区)の鈴木伸一社長は「出荷は高位安定」と話す。市場縮小と言われるが実際の需要はあり、同社も2019年5月期の太陽光パネル出荷量は増加が見込める。鈴木社長に市場動向や新商品戦略を聞いた。

 ―太陽光発電協会(JPEA)によると太陽光パネルの国内出荷量は18年後半から前年比7―8%増とプラスに転じました。
 「実態はもっと増えている。JPEA会員外の海外メーカーが日本で販売を伸ばしているからだ。この数年、JPEAの統計は減少していたが、出荷は高位安定の状態。年800万―1000万キロワットが国内の実需では」

 ―需要が増えている要因は。
 「政府による新規発電事業の認定が進み出した。また、着工が遅れていた発電所の建設も始まった。政府が決める売電価格はコスト低減が反映されている。売電価格が低くても利益が出ると理解している事業者が開発を継続している」

 ―JPEAの統計では住宅向けの出荷が落ち込んでいます。
 「新築の着工が減っているからだ。住宅用に参入する外資は少なく、傾向はJPEAの公表通り。エネルギー消費をゼロにするゼロ・エネルギー・ハウスの普及が太陽光パネルの需要につながるのか疑問だ。今の太陽光発電の価格だと、エネルギー消費ゼロが購入動機になりにくい」

 ―エクソルはすべての建物に太陽光パネルを取り付ける全棟搭載実現プランを発表しました。
 「パネル3枚以下でも設置できる商品を4月、発売する。これまで売電で投資費用を回収する前提だったので20枚以上を搭載することがあった。自宅で使う分だけの発電なら3枚でもよく、価格を抑えられる」

 ―屋根の狭い都市部の住宅も設置可能になりますか。
 「3枚ならどの屋根にも搭載できる。現地作業が減るので人件費も下がり、蓄電池を含めても購入しやすい価格になる。エクソルと取引する住宅メーカーは太陽光パネルと蓄電池を標準品にできる」

エクソル社長・鈴木伸一氏

【記者の目/対海外勢意識した事業カギ】
 業界ではFITに頼らないビジネスモデルが模索されている。パネル3枚の商品は売電を前提としないため、FIT依存脱却のモデルだ。業界団体であるJPEAの統計と実需に隔たりがあれば、それだけ海外メーカーが日本で力をつけた証拠。日本勢には、海外勢と対峙(たいじ)するビジネスモデルも問われる。
(聞き手=編集委員・松木喬)
日刊工業新聞2019年3月14日
松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
業界団体の統計が実需とズレているというのは驚きでした。どの業界でもカバー率によっては精度にデコボコはあるでしょう。太陽光の場合、シェアの大きい海外メーカーが統計から漏れているのでズレが目立つようです。日本メーカーにとっては今後、どうやって事業を継続させるかが課題です。その課題を解決できるとビジネスで優位に立てます。

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