ロスジェネの受難に見る「新卒一括採用」の功罪

ロスジェネ世代論(4)労働政策研究・研修機構 小杉礼子研究顧問

 就職意欲を持つ無業者や長期失業者が今も30万人以上いる「就職氷河期世代」の苦境の要因として、景気の波によって募集数が変動する「新卒一括採用」のデメリットが指摘される。若年者のキャリア形成などを研究する労働政策研究・研修機構の小杉礼子研究顧問に、新卒一括採用の功罪や今後の採用のあり方、氷河期世代の苦境の救済策などを聞いた。  ―就職氷河期世代を生んだ要因として、新卒一括採用のデメリットが指摘されます。採用市場における新卒一括採用の功罪についてどう見ていますか。  学校を卒業したまさにその時期だけを特別視する採用方法によって、1980年前後生まれの世代が割りを食ったのは間違いない。大量採用できる新卒一括採用は60年代に景気が急拡大し、労働力を定着させることが重要になった中で企業に根付いてきた。同期同士で長い競争期間があり、モチベーションが高めやすいといった要素もあって定着した。諸外国に比べて若年失業率を圧倒的に低くしているメリットもある。ただ、この仕組みは景気が悪くなり入り口が狭くなると次の機会がなかなかなくなるというマイナスが起き、不運な世代を生む。  ―そのマイナスを抑制するにはどのような採用方法があるでしょうか。  日本型の雇用と(欧米で主流となっている)ジョブ型の雇用を職種によって使い分ける形しかないのかもしれない。日本型の雇用は個人の職種を限定しない。技術職で採用されて、開発に携わった人が後にその製品の営業職に異動することもある。この仕組みで失業させることなく、社会の変化に対応してきた。この長期雇用が新卒一括採用と連動している。訓練可能性を重視した採用で鍛えれば技術職も営業職にも就けるという考えだ。一方、ジョブ型の雇用は新卒・既卒や年齢にこだわらず、空いたポストに対して採用する。例えば情報技術(IT)系の専門職など一部にそうした仕組みを導入することで採用の柔軟性を生むことができる。ただ、二つの使い分けのバランスは難しい問題だ。  ―就職氷河期世代は多くが非正規社員になりました。この就業状況は20年で改善したのでしょうか。  00年代半ばの景気回復に伴い、正社員に転換する人たちは増えた。ただ、残された人がいる。特にこのときの年齢が影響した。00年代半ばにまだ20代であれば正社員になれたが、30代中盤は第二新卒として扱われず、難しい局面が続いた。それが今も(非正規で働き続けるなど)問題が長引いた人たちを生んだ要因になっている。  ―就職氷河期は採用の間口だけでなく、労働現場の環境も悪化したと聞きます。それは就職氷河期世代にどのような影響を与えたのでしょうか。  景気が厳しい時期は仕事場の環境が悪く、働き手に多様なプレッシャーがかかる。(長時間労働など)今のブラック労働問題に通ずる環境だ。また、不本意の就職も多かった。正社員にはなったが、劣悪な労働環境や不本意就職のためのモチベーションの低さによって2、3カ月(という短期)でやめてしまうケースが少なくなかった。そうなると、その後の転職は非常に難しくなる。正社員になったとしてもキャリア形成しにくい環境だった。  ―キャリア形成が難しかった人たちが今後納得できるポジションに着くためにはどのような方法が考えられますか。  他の世代に比べて経験が足りないと見られているとすれば、何らかの形で証明しなくてはならない。その中で、資格をとってやり直すという仕組みが今のところは効果があると考えられる。(一定の条件を満たす雇用保険の被保険者などの)資格取得などを手厚く支援する専門実践教育訓練給付金という制度もある。こうしたものを活用して例えばIT系の資格を取得し、証明していくことが大事になる。  ―就職氷河期世代の中には働くことが難しくなってしまった人たちもいます。どのような政策支援が必要でしょうか。  長期に安定して就労できなかった人は精神面が非常に厳しいケースもある。また、就職氷河期世代の中には親の介護に直面している場合もある。雇用政策だけでなく福祉政策との連携が必要な段階にきている。  ―政府はこれまでも就労支援を行ってきましたが、それでは不十分だったのでしょうか。  社会的に自立していない人に政策が届いていない部分がある。例えば06年に始まった(働くことに悩みを抱えている15―39歳の就労を支援する)地域若者サポートステーションの仕組みも知らない人は知らない。定着するには時間がかかり、即効性を出すのは難しい。長く続けることが大事だ。 (聞き手・葭本隆太) ♯01  ♯02 ♯03 ♯04 ♯05

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