一つ5000円もする「携帯型茶葉ミル」が消費者に受けた理由

東京商工社、「卸不要論」打ち破る

手動で茶葉を粉砕する「するる」は軽くて小さいため持ち運びが可能

 東京商工社(東京都大田区、草野隆司社長、03・3739・8080)が手がけている携帯型の茶葉粉砕器(ミル)が好調だ。店頭での販売価格は1個5000円(消費税抜き)と若干高めだが、今までになかった商品だったことが消費者に受け、2年で7000個ほど販売した。全社売上高に占める比率は1%もないものの、同商品の事業化の過程で学ぶことは多かった。“卸不要論”が唱えられて久しい中、同社の試みはロールモデルになり得る。  お茶の葉を手動で粉末状にできる茶葉粉砕器は、お茶ミル「するる」の商品名で、通信販売や百貨店で販売している。重量は190グラム、寸法は高さ108ミリ×幅64ミリ×奥行き60ミリメートル。粉砕時に回すハンドルを本体に沿うように収めるため、片手で容易に持て、かばんに入れて持ち運びできる。  茶葉を粉砕するため茶殻が出ず、また、茶葉に含まれる栄養素や食物繊維を摂取できるとあって徐々に知れ渡り、販売数が増加している。健康志向の高まりから「働く女性」をターゲットにしているほか、海外の反応も良いため、包装を改良し、外国人観光客への提案も視野に入れる。  卸売業を取り巻く環境が厳しい中、「卸商品にはない“槍の先端”の役割を持つ自社商品が欲しかった」(草野社長)という。  卸売業を取り巻く環境は厳しい。総務省と経済産業省がまとめた2016年の「経済センサス―活動調査」によると、卸売業の事業所数は36万4814となり、12年調査と比べて1・8%減少。1990年前後のバブル経済のころから同じペースで減少している。  創業70年近く卸売りを営んできた東京商工社は、製造元から販売店に、右から左に商品を流すような卸売りではなく、動きの少ない売り場に適切な商品を置いてもらうような提案営業を展開して生き残ってきた。  だが、良い商品だと思っても、卸商品だと販路の制約がある。対して、自社商品であれば自由に販路開拓ができ、消費者の反応も直接聞ける。こうして4年前、自社商品の開発に着手した。  商品開発のアイデア創出のため、営業担当者が百貨店の売り場を観察したところ、台所用品のお茶のコーナーに動きがないとみた。大手家電メーカーが発売した茶葉粉砕器がヒットしたことも重なり、同分野を開発テーマに決定。消費者の声を拾い上げたところ、手応えを感じ、携帯型の茶葉粉砕器の商品化を目指すことになった。  製造段階では金型に約1000万円かかったが「ものづくり・商業・サービス革新補助金(ものづくり補助金)」で補って完成。生産は国内の製造業に委託して初ロットで3000個を生産した。  「自社商品を持つことで『在庫』に対する意識を醸成できた」(同)という。卸商品は欠品防止のために若干の在庫を持つが、売れなければ製造元に返品すれば良い。自社商品は自ら需要予測して製造・販売、在庫を抱えるリスクを背負わなければならない。  「全ての商品はただ何となく作ったものではない」(同)。取扱商品の無駄と思えるような情報も取り出して小売りに伝えたい、としみじみ話す。 (文=安久井建市)

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