自動車の軽量化を考える(6)進む樹脂化

樹脂化が期待されながらも採用が進まない分野も多い。牙城を切り崩せるか。

帝人のポリカーボネートを使って成形したタクシー向け仕切り窓

 自動車のボンネットを開ければカバーやハウジング、パイプなど樹脂製部品を数多く見られる。一方、ガラス窓や外板など以前から樹脂化を期待されながらも樹脂の採用があまり進んでいない部品もある。これらの部品の樹脂化には耐久性などのハードルが高いからだ。一方で軽量化効果も大きい。自動車業界からの期待に応えるべく、化学メーカーは課題解決にあの手この手を尽くす。    【歪みを抑える】  米国ニューヨーク市を走るタクシー、通称「イエローキャブ」には帝人のポリカーボネート(ポリカ)製の防犯用透明仕切り窓が搭載されている。ポリカは割れにくさと透明性の高さが特徴の樹脂。ガラスに対して3割程度軽く仕上がったという。  三原工場(広島県三原市)で成形し、松山工場(松山市)でハードコーティングする。品質を安定化させるためロボットを使ったフロー方式コーティングを確立し、課題である光学的な歪みを抑えた。同社のポリカは自動車のヘッドランプカバーやサンルーフなどでも採用実績を積んでいる。  サウジアラビア基礎産業公社(SABIC)のポリカは、米フォードが今夏に発表した軽量コンセプト車のリアウインドーに取り入れられた。同一形状と比較して35%の軽量化にあたる3・4キログラム軽くなった。フィアットの多目的車のリア固定サイドウインドーにも同社のポリカが採用されている。  ただ、市販車のフロントやリアウインドーには採用が広がっていない。理由としてポリカは割れにくいが、表面に傷が入りやすく、紫外線にも弱い。10年以上屋外にさらされることもある自動車を用途とするには耐久性に不安がある。  SABICが自社開発のプラズマ成膜技術により日米欧の安全性要求規格に対応した耐摩耗性まで高めるなど 対応も進んでいるが、そうするとコストアップが避けられない。  【接着剤とセット】  ルーフなど外装品向けの開発を進める独ヘンケルは、炭素・ガラス繊維強化プラスチック(FRP)母材用のポリウレタンを試作した。流動性が高いポリウレタンは競合する樹脂の中で成形時間が短いことから量産性に優れる。足回り部品に採用されたのに続き、外装品へと採用を広げるため、高温環境の塗装工程に耐えられるよう耐熱性を改良した。  ただ、樹脂製外板採用には金属など異種材との接合が難しいという課題も立ちはだかる。そこでヘンケルは自社の異種材接合用の接着剤とセットで顧客に提案している。  【電装品に拡大】  このほか樹脂化が進んでいない例として電子制御ユニット(ECU)やセンサーといった電装品がある。パソコン用半導体チップと比べ大型で温度変化が激しいなどの理由から、金属製の放熱部品などが使われている。これに着目した住友ベークライトは熱膨張が小さく、ガラス転移温度を高めた専用のエポキシ樹脂封止材を開発。2015年から2輪のECU、18年ごろから4輪ECUにも採用が広がる見通し。  半導体や基板を一括で封止することで筐(きょう)体を不要にし、電装品を小型化できる。顧客である電装品メーカーなどは、半導体の設計の見直しなども進めれば体積と重量を従来の4分の1にできそうだという。  樹脂の課題である耐久性や耐熱性などについては改良が進んできた。ただ、樹脂を金属とうまく接合できないと採用を見送られたり、半導体の設計を見直さないと電装品の樹脂化を進めても軽量化効果が不十分だったりする。素材開発に加え、自動車の組み立てや設計などの工程にも積極関与していく必要が高まる。

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