ニュースイッチ

デンソー、役員半減で狙う経営スピードアップ

他のトヨタグループは追随するか
 デンソーは18日、4月1日付で役員数を55人から28人に半減すると発表した。現在の会長(空席)と社長、副社長、取締役、専務役員、監査役を役員とし、専務役員は「経営役員」に名称を変更する。従来の常務役員の名称は「執行職」に変え、現場トップとしての役割を明確化。経営のスピードアップにつなげる。

 副社長では丸山晴也氏が退任し、臼井定広専務役員が昇格する。経営役員にはジェイテクトの高橋伴和専務が就任するほか、常務役員から飯田康博氏や伊藤健一郎氏ら5人が昇格。副社長は4人、経営役員は15人の体制となる。
(日刊工業新聞2019年2月19日掲載)

トヨタは1月に役員体制スリム化


 トヨタ自動車は2019年1月1日付の新役員人事と組織改正を発表した。幹部職を新設し、常務役員、常務理事と、部長や主査などに当たる基幹職1級、主査や室長などの基幹職2級を統合する。専務役員の役職は執行役員に変える。また技術系を中心に組織を再編し、部の数を239から220に減らす。組織と役員体制をスリム化し、経営の加速と人材育成の強化を狙う。

 豊田章男社長は「階層を減らすことによって、これまで以上のスピードで即断、即決、即実行できるトヨタに生まれ変わる」とコメントした。

 現状で14人いる専務役員では田口守氏と小林一弘氏が退任し、33人いる常務役員から朝倉正司氏、前田昌彦氏、宮崎洋一氏が昇格。社長、副社長、フェローを除き合わせて47人いる役員は、計15人となる。常務役員の永田雅久氏、高見達朗氏、槙祐治氏、村上秀一氏、七原弘晃氏、今井斗志光氏、山岡正博氏は退任する。

 幹部職の対象は計約2300人となり、この中から若手やベテランを問わず本部長、副本部長、領域長、工場長、グループ長を配置する。副社長以上は変更しない。

 組織再編は主に技術分野で実施する。これまで細分化されていた部を機能ごとに統合し経営効率を高めると同時に、組織間の交渉などをしやすくする。機能軸で再編することで、幅広く人材育成することも狙う。

縦横無尽に活躍できる企業風土を


 トヨタ自動車が経営の迅速化や人材登用に向けて、役員体制の変更と組織再編に乗り出す。今年実施した、役員人事の3カ月前倒しを2019年1月も継続し、役員数は大幅に絞って組織数も削減する。自動車産業はCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)への対応や異業種参入など環境変化が激しい。トヨタはスピード感や柔軟性を高めて難局に挑む。

 「覚悟はできている。会社にとってよいことだ」。トヨタの常務役員は、19年1月に新設される「幹部職」についてこう期待感を語る。常務役員と常務理事、基幹職1級・2級がひとくくりとなるため、常務役員は結果的に“降格”と捉えられてもおかしくない。しかし、社内階級が減り、若手社員の登用などがしやすい環境になることに肯定的な意見が出ている。

 トヨタ首脳は「うまくいくかは分からないが、うまくいけば強くなる。(昇格が)ここまでと思っていた人もまた頑張る」と狙いを説明する。役職への緊張感やモチベーションを高めて、競争力の強化につなげていく構えだ。

 組織改正では部組織を改正前から19部減の220部にし、組織間の調整を減らして業務を円滑に進めやすくする。エンジンを担う「上郷工場品質管理部」と「下山工場品質管理部」は「上郷工場・下山工場品質管理部」に統合するなど工夫する。

 また、19年1月をめどに、豊田通商にアフリカ市場の営業関連業務を全面移管するため「アフリカ本部」は廃止して「アフリカ支援部」に変更。豊田通商から派遣された今井斗志光常務役員アフリカ本部長は1年で古巣に復帰する。

 経営のスピードアップとともに人材育成の必要性を強調する豊田章男社長は「その時々に必要となる一芸を持ったその道のプロが、年齢や学歴に関係なく、縦横無尽に活躍できる企業風土をつくることが何よりも大切だ」と思いを述べる。
(文=名古屋・今村博之、日刊工業新聞2018年12月3日掲載)
日刊工業新聞2019年2月19日掲載
梶原洵子
梶原洵子 Kajiwara Junko 編集局第二産業部 記者
役員体制のスリム化は、トヨタ自動車に続いて、だと思います。他のトヨタグループ企業も追随するのか気になります。

編集部のおすすめ