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“若者に勝てる”アプリ開発、お年寄りがプログラミングをする意義

テセラクト社長・小泉勝志郎氏インタビュー
“若者に勝てる”アプリ開発、お年寄りがプログラミングをする意義

写真はイメージ

 テセラクト(宮城県塩釜市、小泉勝志郎社長、090・8616・1431)は、シニア向けプログラミング事業に取り組んでいる。全国の自治体から講座などを受託するビジネスモデルで、2020年度に1億円の売り上げを目標に掲げる。小泉社長に事業の背景と今後の戦略などを聞いた。

―17年に小泉社長が指導した80代女性がゲームのアプリケーションを開発し、世界的に話題になりました。

「スマートフォン向けアプリ『hinadan』を開発した若宮正子さんから、お年寄りが若者にも勝てるアプリをつくりたい、と相談を受けて指導した。他県に在住していたため、スカイプなどを通じて遠隔で行った。スマホは操作する上で、お年寄りにしか分からない“不便さ”がある。お年寄り自身がプログラミングをする意義があると感じた。子ども向けのプログラミング教室は多いが、お年寄り向けはほとんどない。そこに市場性を感じた」

―教材開発にも取り組みました。

「自治体などから委託を受けて、シニア向けプログラミング教材を開発した。すでに東京などで実証実験を終えている。特徴としては、貼り付けるだけで、音が鳴るプログラミングが起動するなど、教えるための専用部品を用意している点。いかにプログラミング言語を書かないようにするか。短期間でアウトプットさせることに特化した教え方をしている。これはモチベーションを保つ上で大事なことで、理解が深まれば徐々に自分で書けるようになってくる」

―現在、自治体から要請を受けて講座も主催しています。

「京都府精華町から依頼を受け、18年末ごろから1月まで、シニア向けプログラミング講座を主催してきた。受講生は60―70代の約20人。アンドロイド向けアプリの開発を進めており、今後随時リリースしていく。京都精華大学教授でマンガ家のすがやみつる先生ともコラボレーションし、研究室の学生が書いた絵をアプリに使うことも予定している。自治体から講座を請け負ったのは、これが初めて。これを一つのモデルケースとして、全国でプログラミング教室を展開したい。将来は、お年寄りがアプリ開発などを仕事にできるよう手助けしたい」

テセラクト社長・小泉勝志郎氏

【チェックポイント/IT人材不足解消の救世主】
「仕事つきの高齢者住宅ができるかもしれない」と小泉社長。たとえ足が不自由でも、またリモートワークができるという意味でも、シニア層とITは仕事としての相性はいいともいえる。IT人材は数十万人不足しているといわれており、お年寄りが救世主となるかもしれない。同社によると、お年寄りのプログラミングに対する学習需要は高いという。あとは学習環境をいかに整えるか。同社の取り組みはまだ始まったばかり。今後の展開に注目が集まる。
(文=仙台・田畑元)
日刊工業新聞2019年2月5日

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