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「事業承継税制」を活用する時の注意点は?

連載・事業承継指南(3)
 事業承継税制(後継者が非上場会社の株式等を先代経営者等から贈与・相続により取得した場合において、贈与税・相続税の納税が猶予・免除される制度)に特例措置が創設されて、4月に1年が経過する。特例措置では、従前の制度と比較して、適用株式数の上限撤廃、納税猶予割合の増大、雇用維持要件の緩和、後継者の範囲の拡大等、要件が大幅に緩和された。特例措置を適用するには「特例承継計画」を提出する必要があるが(図表)、その提出件数が2018年12月末までの9カ月間で1800件を超えたことから関心が高いことがわかる。中小企業庁によると、従前の事業承継税制は18年3月31日までの9年間で贈与税・相続税の認定数は2312件だった。

          


 そこで今回は事業承継税制(特例措置)の活用にあたって、特例承継計画作成時の主な注意点について述べたい。

(1)特例措置は時限立法である。「特例承継計画」を提出して実行しなかったとしても罰則規定はないため、承継時に税負担が想定される場合、活用するかしないかにかかわらず提出しておきたい。特例承継計画策定をきっかけに自社の将来について考えることが重要である。

(2)特例承継計画の主な記載内容は、「会社概要」「代表者」「後継者」「代表者から後継者へ自社株式を承継する前までの経営計画、承継後5年間の経営計画」であり、計画的に経営課題に取り組むことと引き換えに納税が猶予される。相続税対策(自社株対策)の記載が求められているわけではない。

(3)「特例承継計画」を提出する際は、認定経営革新等支援機関の所見が必要である。自社の顧問税理士が認定を受けているのか否か確認しておきたい。

 以上、特例承継計画作成にあたっての注意点を述べたが、事業承継税制は一度適用してしまうと後戻りができないため、自社が事業承継税制の適用要件を満たしているのか、将来的に要件を満たし続けることができるのか、適用前に専門家を交えた十分な検討が必要である。(金曜日に掲載)

◇中小企業基盤整備機構 事業承継・引継ぎ支援センター 事業承継コーディネーター 種山和男

これまでの記事はこちら
第1回/深刻化する後継者不足、1番の問題は?
第2回/経営者と後継者の“対話”で企業の課題が浮かび上がる
日刊工業新聞2019年2月8日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
事業承継税制については国税庁のホームページでも手続きやQ&A、チェックシートなどが掲載されています。事業承継指南は次回が最終回。2月15日に掲載予定です。

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