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外国人材の確保もインターンシップから始まる時代に

東京都がマッチング支援として実施、中小企業からの需要が高い
外国人材の確保もインターンシップから始まる時代に

中国人インターン生を受け入れ、若手社員が指導(コトブキ)

 外国人材とのマッチングに取り組む中小企業が増加している。深刻な人手不足を背景に、外国人労働者の雇用に前向きな企業が多い。都内中小製造業は、東京都がマッチング支援として実施する短期インターンシップ(就業体験)を活用し、双方が納得できる形の採用につなげる。

互いに選ぶ機会


 工作機械の販売や中古機械の整備・販売を手がけるコトブキ(東京都大田区)は、製造業経験のある中国人インターン生1人を受け入れた。若手社員が指導しながら機械の整備を行った。現場での業務を経験し、相互理解を図った。

 1週間で2台の卓上ボール盤の分解整備に挑戦。インターン生の呉峰博さんは、中国で圧縮機製造の経験があり、インターンでは実際に旋盤を用いて部品を研磨するなど技術を生かした。1台目は社員が横に付いて指導し2台目は主に1人で整備してもらった。

 同社は2018年10月に東京都の外国人向け合同企業説明会に参加したことをきっかけに都が実施するインターンを知った。馬場三高社長は「学ぶ姿勢があれば日本人、外国人は関係ない。実際に会ってお互いに選ぶのが理想」と話す。半面「中小企業は人を呼ぶために時間や多大な費用をかけられない」。今回は短期で負担が少なく、実施を決めたという。

アレルギー克服


 粘着製品を開発・製造するコスモテック(東京都立川市)は、中国人留学生を受け入れた。1週間で社内の各部署を回り、半日は担当者が仕事内容を教え、残りの半日で仕事を一緒にしてもらった。業務を把握すること、日本人とのコミュニケーションに慣れることを目標に設定。

 高見沢友伸社長は、インターンの利点として「外国人に対する“アレルギー”を克服できる。新しい文化、言語の人材が来れば知見が広まる」ことを挙げた。同社はこれまでも南米の留学生を2回インターンに招いた。実施後、採用に結び付かない例もあるが「インターンを行うことで外国の方に知ってもらえる。中小はまず認知してもらうことが重要」(高見沢社長)とした。

 現在、コスモテックではパート社員も含め9人の外国人を雇用しているが、採用基準は日本人とほとんど変わらないという。今後も優秀な外国人材の確保で試行錯誤を続ける。

東京都の取り組み 合同企業説明会を年3回実施


 東京都は「中小企業の外国人材受入支援事業」の中で外国人材とのマッチング支援に取り組む。運営をパソナに委託し、18年度は年間約30社でインターンを行うほか、年3回の合同企業説明会を実施している。

 同事業は15年度に開始。当初はセミナーや個別相談会など外国人の受け入れ経験がない中小企業向けの情報提供が中心だったが、17年度からはより実践的で採用を見据えた内容としてインターンなどを盛り込んでいる。

 外国人の採用ルートが分からない、受け入れ態勢が整っていないなど現在も初歩段階での支援の需要は高い。一方で、外国人材を採用後、言語や文化の壁による食い違いなどの悩みを抱える企業も増加している。

 都産業労働局雇用就業部の林さやか人材確保支援担当課長は「入り口のサポートは継続しつつ、今後はその先の支援も強化し、さまざまな段階の企業を応援したい」と方針を語った。
(文=南東京・増田晴香)
日刊工業新聞2019年1月30日

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