電機産業の生きる道、中韓勢と一線画すソニーとパナソニックの答え

CESで“新たな姿”示す

CESでエンターテインメント事業への注力について語るソニーの吉田社長

 ソニーとパナソニックが家電メーカーの枠に収まらない新たな企業像を打ち出している。米ラスベガスで今月開かれた世界最大級のIT・家電見本市「CES」では、ソニーは従来の製品中心の展示を改め、エンターテインメントの力を全面的にアピール。パナソニックは自動車から家電、ITまで、特定領域に絞らない幅広い展示で事業範囲の広さを見せた。こうした多様性は両社が生き残る道を示すと同時に、日本の電機産業の方向性も示唆する。  「ソニーは『クリエイティブ・エンタテインメント・カンパニー』だ。我々の技術と製品で、クリエーターに貢献する」―。ソニーの吉田憲一郎社長は、CESで高らかにこう宣言した。会場で開かれた会見では、ソニーの映画や音楽、アニメ部門のトップが次々と登壇。ソニーの技術や製品がコンテンツ制作にいかに寄与しているかを語った。  さらに著名アーティストのファレル・ウィリアムス氏まで登場し、ソニーの技術を体験した様子を紹介。ウィリアムス氏は「ソニーの技術がユーザーとクリエーターとをつなぐ」と賛辞を贈った。製品に言及したのは、ソニー・ピクチャーズアニメーションのクリスティン・ベルソン社長が紹介した8Kテレビくらいだ。  前回のCESでは平井一夫会長が車載用画像センサーや有機ELテレビといった新製品を次々とアピールしたが、全く異なる風景となった。ブースの作りも一変。映像や音楽、ゲームなどテーマ別に構成し直し、製品の数を厳選した。高木一郎専務は、「エレクトロニクスとエンタメの融合に、どう取り組んでいるかを提案した」と意図を説明する。  現在、サービス部分を担うIT基盤は「プラットフォーマー」と呼ばれる大手IT企業が押さえており、製品単体での差別化は難しい。ソニーの強みでもあるコンテンツと技術・製品の融合を足がかりにすれば、競争力の向上につながる。  さらにソニーは継続的に稼ぐ「リカーリング型」のビジネスモデルを全社的に導入しようとする。音楽や映画、ゲームといったコンテンツはその中核。各事業の製品や技術に横串を通す役割も担う。  高木専務は「エレクトロニクスのみならず、エンタメやサービス提供といったソニーのあらゆる事業でテクノロジーの重要性が増しており、それが強みだ」と自信を見せる。  パナソニックも、車載向けを中核にした前回のCESとは異なり、各事業をまんべんなく配置。総花的に映った一方、そのポートフォリオの広さも印象づけた。宮部義幸専務は「パナソニックは単一事業の企業ではない」と説明した上で、自社の強みを「今後デジタル化でつながる社会では、さまざまなカテゴリーの製品を持つ方がメリット」と話す。  津賀一宏社長は「家電に人工知能(AI)を入れるだけではコモディティー化する」と主張。韓国のサムスン電子やLG電子と違う点として、「我々は家電に加えて家を構成する部材や設備などを持つ」と、一括提案できることを強調した。  幅広い事業ポートフォリオを生かしてBツーB(企業間)事業を強化し、その上でデジタル化を実現。継続的なサービス更新で収益化を図る。ソニーとパナソニック、両社が志向するビジネスの方向性も、根本は同じだ。  両社が発するメッセージは、今や家電市場の覇権を握った中韓勢とは一線を画す。  LG電子はスマート家電を配置した部屋を模した展示で、コンシューマー向けを積極的にアピール。台湾・鴻海精密工業の傘下入りしたシャープも、8KやAIとIoT(モノのインターネット)を組み合わせた「AIoT」を軸に、カメラやテレビなど製品中心に展示。エレクトロニクス企業としての復活をアピールした。  日本の電機メーカーは家電事業の不振が引き金となり、構造改革を続けてきた。経営の立て直しを経て、持続的成長を実現する事業を模索してきた両社が出した答えが、事業融合による差別化だ。今後は新たな方向性で新たな事業やビジネスモデルを生み出し、収益化できるかがテーマになる。  ―今回のメッセージは、「エレクトロニクスからの脱却」を意味するのでしょうか。  「そちらもきちんとやっている。苦戦だったエレクトロニクス事業が復活し、技術を軸としたエンタメ事業との融合が進んだ」  ―収益構造への効果は。  「テクノロジーや知的財産の活用でシナジーを高める」  ―360度の音場体験ができる「360(サンロクマル)リアリティーオーディオ」技術を披露しました。  「新技術をもとに、コンテンツ制作から流通、再生ハードウエアまでの一連の流れを作り、収益化する。まずはファイル形式の普及を進めて市場リーダーの位置付けを確立し、シェアを取りたい」  ―8Kテレビへの参入を表明しました。  「映像表現として8Kの体験価値を出せる製品ができた。ただ(映像制作などコンテンツを含めて幅広く展開する)『8Kエコシステム』を作ることは、まだ考えていない。まさにスタート地点に立った所だ」  ―注力技術は。  「今後のつながる社会では、我々の製品が有機的につながらねばならない。そのためのIoTプラットフォームに全社横串の活動として力を入れている」  ―プラットフォームを外部提供する計画は。  「クラウド対応の製品が増えており、一つのクラウドに集約してサービスなどの共用を始めた。今は社内での展開だが、対応商品は多い。広くオープンにはやっていないが、他社と個別パートナーシップを考えている」  ―幅広い製品群で何ができるようになりますか。  「例えばエアコンと空気清浄機など、製品同士の連携をやろうとしている。温度情報などのデータも共有して活用することを考えている。複数機器の動作状況を掛け合わせれば、さらなる価値を提供できる」  ―幅広い人材が必要です。  「これからは単品の商品では成長はない。タテの概念を崩して新しい概念の商品を生み出せる人や、製品を組み合わせてソリューション型提案ができる人を増やす」 (文=政年佐貴恵) <関連記事>

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