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アイシン精機社長、カーシェア時代は部品ビジネスで終わらない

伊勢清貴氏 「システムや車台まで立ち入らなければならない部分もある」
 ―社長に就任して半年がたちました。
 「200社超のグループ企業を抱える点が、アイシンの大きな特徴。皆が同じ方向を向いて一致団結するのが重要だ。会社の構図を変え筋肉質な体制にしなければならない」

 ―グループ会社を機能ごとにまとめる「バーチャルカンパニー(VC)」の成果は。
 「ドラムブレーキ事業を豊生ブレーキ工業(愛知県豊田市)に、変速機事業をアイシン・エィ・ダブリュ(AW)に集約するなど、成果は出てきた。浮いた人員は電動化や自動運転領域にシフトし、効率を高める。また、横串を刺して事務機能を統括する部門があるが、4月にグループ主要6社の監査と法務機能も統合する。ITについても横串機能を強化する方針で、重複部門を減らしムダを省いていく」

 ―アフター市場のVCを新設しました。
 「グループの商流を活用して部品を一括提案する体制の強化と、シェアリング時代を見据えた商流を確保するのが主な目的だ」

 ―シェアリングが進めば自動車の販売台数は減る見通しです。
 「ただし、部品の交換頻度は高まる。耐久性要求は厳しくなるだろう。アイシン精機がタクシー向けに部品を供給している知見は強みだ。一方で部品単体ではなく、システムやプラットフォーム(車台)まで立ち入らなければならない部分もあるだろう。メンテナンスをどこまで手がけるかは課題だ。部品供給だけでなく、データ収集による故障の予兆管理は、コネクテッド(つながる)の一つとしてやろうと考えている」

 ―中国市場が減速しています。AWの増産計画に影響は。
 「広州汽車や吉利汽車と進める合弁工場が立ち上がるのは、2020年。現時点では計画に変更はない。ただし自社で行う増産投資は時間軸など、臨機応変に対応できるような検討は進めている」

 ―手がける製品の領域が広い半面、強みが薄まるという懸念もあります。
 「選択と集中で、例えばサンルーフやパワースライドドアといった得意分野をいかに強化できるか。競争力の高い製品ならトヨタ自動車以外の顧客にも提案できる。拡販を狙った製品企画にすることも重要だ。こういう施策が進んでいけば、ゆくゆくは現状60%程度のトヨタ向け売上高比率は50%程度になるだろう」
日刊工業新聞2019年1月24日掲載
政年佐貴惠
政年佐貴惠 Masatoshi Sakie 名古屋支社編集部 記者
VCの成果は徐々に出始めているが、改革は緒に就いたばかり。継続してムダに切り込むことが体質強化には欠かせない。4月にはデンソーと、電動化向け駆動モジュールを手がける共同出資会社を設立する。伊勢清貴社長は「生き残るために連携や外部知見の取り込みは必須」としており、内部改革と外部連携を両立するスピード感が一層求められそうだ。

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