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17研究機関と1つの国立大が運営統合する事情

交付金減に対応
 大学共同利用機関法人の4法人と総合研究大学院大学(総研大)が、2022年度に運営を統合する。新設する一般社団法人に5法人のまま参画する。予算や人員、調達、情報セキュリティー、社会貢献窓口など多くの業務を一元化し、効率化や柔軟な資源配分を追求する。4法人への運営費交付金等は計約800億円と東京大学と同規模。大学共同利用機関法人は加速器など保有する大型設備を通じて全国の研究を支えている。科学技術力の強化と交付金改革を連動させたものとしても注目される。

 大学共同利用機関法人の4法人は情報・システム研究機構、高エネルギー加速器研究機構、自然科学研究機構、人間文化研究機構。4法人は、国立情報学研究所や国立天文台など計17機関を傘下に持つ。個別大学では持てない研究資源を、全国の研究者に提供する役割を担う。「国立大学等」の一角を占め、国立大学法人法に基づき、国立大学法人の運営費交付金等で活動している。

 4法人の交付金等約800億円のうち300億円程度が、加速器「スーパーBファクトリー」や学術情報ネットワーク「サイネット」など大型プロジェクトに使われている。交付金等は法人化した04年度比3・8%減で、86校の国立大と同様に改革が求められている。4法人と総研大との新体制は22年度にスタートする各法人の第4期中期目標期間に合わせて発足する。交付金減少の中でも、効率的な資源配分により機能強化が進むと期待される。

 また、4法人傘下の17機関は研究を通じた博士人材育成を手がけている。学生は総研大に所属して学位授与のプロセスを経る。同大の改革も今回の狙いの一つ。新体制発足後は総研大で学ぶ学生の増加も期待される。

 

日刊工業新聞2019年1月23日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
国立大統合と同様の仕組みで、大学共同利用機関法人と総研大の運営が統合されることが明らかになった。組織としての同法人の知名度は高エネ機構を除くと低いが、国立天文台、国立極地研、歴博(国立歴史民俗博物館)といった傘下の研究機関は一般にもなじみがある。国の高等教育の議論では、86の国立大ばかり注目されるが、これらの4法人17機関のありようにも目を配る必要がある。

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