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「変なホテル」“脱ロボ”化の異変、ハウステンボスの目論見

ピーク時の27種類から現在は15種類に
「変なホテル」“脱ロボ”化の異変、ハウステンボスの目論見

「変なホテル」では受付で人型ロボットが宿泊者を迎える

「変なホテル」に異変―。ハウステンボス(長崎県佐世保市、沢田秀雄社長、0956・58・0080)が展開するホテルに新たな変化が起こっている。生産性を追求し、変化し続ける意味を名前に込めた「変なホテル」。当初はロボットの活用が注目されたが現在は脱ロボットの動きも見せる。進化するホテルに何が起きているのか。

生産性を追求


 「変なホテル」は2015年7月、テーマパークに隣接して72室でオープン。16年3月に2期棟、18年12月には3期棟が完成して200室まで拡大した。

 3期棟では訪日外国人(インバウンド)対応の強化を目的に和室を初導入。靴を脱ぐ形式を導入するなど日本文化を前面に出した。エネルギーコスト抑制のためフィルム型太陽電池を設置し、電力の自給自足へ向けた取り組みも始めている。

 ホテル運営の根幹には「人件費や光熱費で生産性ナンバーワンになる」(沢田社長)との考えがある。「初めてロボットが働いたホテル」としてギネスに認定されるなどロボットのイメージが強いが、その導入は生産性を追求した結果に過ぎなかった。

時代遅れに…


 ピーク時は27種類あったロボットだが現在15種類。エンターテインメント性を持つものより実務的なものが残る。3期棟で採用したのはロボット掃除機のみだった。

 ロボットが減った理由の一つが進化の速さ。4年前に導入したものは既に時代にそぐわず宿泊者を満足させられない状況が起きている。照明のスイッチなどの機能を持つ客室の音声認識ロボットの技術は、身近なスマートフォンの方が優れることもある。最新型に入れ替えようにも際限がない。

 水に弱いなどロボットが抱える弱点も目立ってきた。天候や場所によっては使用に制限が生じる。大江岳世志総支配人は利用客へのアンケート結果から「お客さまの期待値が高いぶん、残念に思われる」と見ている。

次のステージへ


 宿泊者はロボットの活躍を予想して来るが運営側はロボットを必須としていない。そのギャップを乗り越えようとロボットに次ぐ目玉として目標を掲げるのが「完全キャッシュレス」。隣接するテーマパークを含む広範囲で実現し、新たな驚きと価値を提供する。ロボットにこだわらず、新たなテクノロジーを取り込む「変なホテル」は次のステージに進もうとしている。
(文=増重直樹)
日刊工業新聞2019年1月11日

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