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木質構法で中層マンション、初適用した清水建設の技術

鉄筋コンクリ造と最適組み合わせで耐震性、耐火性、遮音性を確保
木質構法で中層マンション、初適用した清水建設の技術

木質構造を採用した中層集合住宅(イメージ)

 清水建設は、中大規模の耐火建築向けハイブリッド木質構法「シミズ ハイウッド」と木質耐火部材「スリム耐火ウッド」を、名古屋市千種区に建設する中層集合住宅「茶屋ヶ坂アパート建替工事」に初適用する。木質構造を適材適所に使える同構法を使い、中層集合住宅に求められる耐震性、耐火性、遮音性を確保するため、木質構造と鉄筋コンクリート造を最適に組み合わせる。

 同住宅は地上4階建てで延べ床面積が3152平方メートル。2020年2月に完成の予定。構造体や内外装の仕上材など計178立方メートルの木材を採用し、木質居住空間を創出。国土交通省から18年度の「サステナブル建築物等先導事業(木造先導型)」に採択された。

 柱や梁(はり)の接合部は耐震性、耐火性、施工性に優れたプレキャストコンクリート接合部材を使って一体化する。

 耐震壁には直交集成板(CLT)パネルを採用。一部で鉄筋コンクリートとCLTの合成床版を検証する。

日刊工業新聞2019年1月9日


他の大手ゼネコンも開発推進


 建築物における木材利用の促進に向け、大手ゼネコンが、火災に強い木質材料である耐火集成材の開発、適用を進めている。二酸化炭素(CO2)の排出削減や国内林業の活性化、木質素材にこだわる建築ニーズを背景に、技術開発に力を入れる。耐火集成材は通常の木材と比べ、燃えにくい構造を持ち、木の質感を生かせるのが特徴。価格が割高なのが難点だが、普及・拡大に向け、コスト低減に取り組む考えだ。

 国内では2010年に「公共建築物等木材利用促進法」が施行され、公共建築物を中心に木材利用が進められている。木のぬくもりや温かみ、質感などから「意匠性を評価して木造建築をつくりたいというニーズがある」(ゼネコン関係者)。

 耐火集成材は、建物が火災に遭っても「簡単に崩れないようにして避難や消火の時間を稼ぐ」(同)役割を果たす。このため1時間耐火など一定時間の耐火性能を持つ。耐火集成材の多くは3層構造になっている。中心部に荷重を支える木材を、その周囲に石こうボードなど燃えにくい材料を用いた「燃え止まり層」を配置。その外側に、燃えても建物構造上に影響を与えない「燃えしろ層」で構成している。

 ゼネコン大手は耐火集成材の開発を進め、適用を始めている。実績を伸ばしているのが、竹中工務店の耐火集成材「燃エンウッド」だ。これまでに7件の適用実績がある。燃え止まり層に木とモルタルを交互に配置し、モルタルで熱を吸収しながら燃焼を停止させる。1時間の耐火性能を持つ。

 鹿島は東京農工大学など4者で開発した耐火集成材「FRウッド」の適用を進めている。燃え止まり層にも木材を採用したことで、木材利用100%であるのが特徴。燃え止まり層に難燃薬剤を注入して、1時間の耐火性能を確保している。適用実績は3件ある。

 大林組はシェルター(山形市、木村一義社長、023・647・5000)の技術協力を得て、汎用木材を使った2時間の耐火機能を持つ耐火集成材「オメガウッド(耐火)」を展開している。単板の積層材を複数接着する木質材に比べ、約60%のコストを削減できる。

 清水建設は菊水化学工業と耐火集成材「スリム耐火ウッド」を開発している。燃え止まり層は、耐火シートと強化石こうボードを組み合わせた二重構造で耐火性能を向上。他社製と比べ、燃え止まり層と燃えしろ層の厚さを最大で半分程度にできる。

耐火集成材を使った木造建築(鹿島のFRウッドを柱と梁に適用)

(文=村山茂樹)
日刊工業新聞2017年9月22日
葭本隆太
葭本隆太 Yoshimoto Ryuta デジタルメディア局DX編集部 ニュースイッチ編集長
文中登場の「サステナブル建築物等先導事業」は木質化などの低炭素化に関する先導技術の普及啓発に貢献する住宅・建築物プロジェクトについて国が建設費の一部を補助するもの。今回の物件は清水建設の社有社宅ということもあるためか、免震を取り入れるなど、豪華に作っている印象があります。ビジネスとして展開する際の導入コストが気になります。

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