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仕切り直しの仮想通貨ビジネス、「3月から動き出す」は本当か

 金融庁は2018年12月21日、3月から11回にわたって開いてきた「仮想通貨交換業に関する研究会」の最終報告書を発表した。同研究会はコインチェックからの約580億円分の仮想通貨の不正流出を受け、3月に法律関係学者らをメンバーとして発足。法制度改正の議論を進めてきた。

 金融庁は報告書の提言に沿って1月召集の通常国会に資金決済法と金融商品取引法の改正案の提出を目指す。一方、日本仮想通貨ビジネス協会(JCBA)とブロックチェーン推進協会(BCCC)は昨年12月27日、両協会連携の協定締結を発表した。停滞した昨年を経て、2019年は仮想通貨ビジネスがどこまで活性化するのか注目される。

最終報告書まとまる


 「仮想通貨交換業に関する研究会」の最終報告書は、研究会発足のきっかけとなった①顧客の仮想通貨の流出事案②事業者の内部管理態勢の未整備③価格の乱高下④証拠金取引やICO(イニシャルコイン・オファリング)など新たな取引の登場――の4テーマについてまとめている。研究会で貫かれている方針は仮想通貨の購入者による適正な自己責任だとした。

 その上で大きく三つの対応をテーマに報告書がまとめられた。

 【仮想通貨交換業者の課題】交換業者には預かり仮想通貨の金額以上の純資産や弁済原資の保持、流出時には優先弁済の対象とする仕組みを整備、財務書類の開示を義務付けた。また、取引価格情報の公表、投機的取引を助長する広告・勧誘の禁止、問題がある仮想通貨の取引の禁止などを求めた。

 【仮想通貨証拠金取引など】証拠金、信用取引には倍率(レバレッジ)の上限を設定する。

 【ICOへの対応】将来の可能性も踏まえつつ、規制を整備する。投資性を持つICOは規制対象となることを明確にするほか、50人以上に勧誘する場合の情報開示を義務付ける。株式と同様の不公正取引規制を適用する。

 【その他】風説の流布、不当な価格操作を禁止。インサイダー取引の禁止、カストディ業務も業規制の対象とする。

 法制度上の呼称を「仮想通貨」から「暗号資産」に変更する。

加盟企業を倍の500以上に


 一方、仮想通貨の業界団体である日本仮想通貨ビジネス協会とBCCCは昨年12月27日、共同記者会見を開き、両協会連携の協定締結を発表した。今後、仮想通貨とブロックチェーン技術の普及促進と健全な業界育成を目指し、社会全体への啓発活動を展開する。会員の拡大では2020年3月末に加盟企業を現在の倍の500以上を目指すとしている。

 また、システム部会、セキュリティ部会、金融部会、リスク管理部会など両協会が運営している部会への相互参加・交流を進めるほか、仮想通貨・ブロックチェーンの啓発につながる大規模イベントを2019年中に共催するなどの計画を発表した。

 JCBAの会長を務める奥山泰全氏は2018年を振り返り、「非常に苦しい一年だったが各社が改善に取り組み、大きな前倒しができた。2019年には仮想通貨が心機一転、仕切り直しとなる年としたい」と述べた。またBCCCの平野洋一郎代表理事は流出事件や価格下落について「ブロックチェーンそのものの技術的な欠陥ではない」と強調。2019年を「晴れわたる年にしたい」と語った。

 参加関係者は2019年の仮想通貨ビジネスの見通しについて「3月ごろからは動きだすのでは」との意見も聞かれた。

【電子版連載「丸山隆平のフィンテック最前線」(17)より】
著者:丸山隆平(まるやま・りゅうへい)
1972~1989年 日刊工業新聞記者としてICT産業、流通業界など取材。1990~2012年、IRコンサルタントとして100社以上の財務広報をサポート。2013年~フリーの経済ジャーナリストとして、経済誌、Webメディアで活動。現在、金融タイムス記者、プレジデントオンライン、ZUUonlineなどに寄稿。著書に『AI産業最前線』(共著、ダイヤモンド社)、『まるわかりフィンテックの教科書』(プレジデント社)などがある。1948年、長野県生まれ。
日刊工業新聞電子版2019年1月4日掲載

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