2019年業界ごとの天気予報!晴れでも“雲”の接近には要注意

訪日外国人客は引き続き、増加する見通し(東京スカイツリーが見えるスポットが人気=東京都台東区)

 平成が終わり、新元号となる2019年。新しい時代の幕開けとなる年の産業・経済情勢は、晴天ながらも雲がかかり始めそうだ。米中貿易摩擦とそれに伴う中国経済の減速、英国やフランスをはじめとする欧州の政情の不透明さなどが世界経済に大きな影響を及ぼす。国内では10月の消費増税による消費意欲の減退が懸念される。産業界には雲を吹き飛ばすような新風を起こすことが望まれる。  人、モノの動きは引き続き活発だ。航空・鉄道のレジャー需要は春の超大型連休や訪日外国人客の増加で見通しが明るい。雇用環境は良く、都市鉄道の定期利用客も微増が続きそう。国際貨物も航空、海上ともに堅調だ。陸運は運賃適正化がトラックから、モーダルシフト先の鉄道、フェリーなどにも波及する。不安要因は地政学リスクと自然災害。  製造、流通業など全産業でデジタルトランスフォーメーション(デジタル変革)が加速しており、見通しは明るい。人手不足の解消や働き方改革の実現にもデジタルの力が不可欠で、企業のIT投資は堅調が続く。一方、セキュリティーや人工知能(AI)など先端技術を扱う人材が不足しており、人材確保が各社の業績の明暗を分ける。  車の電装部品は引き続き好調だ。自動運転や高速・大容量のデータ通信を可能にする第5世代通信(5G)の普及に向けた基地局向けや、IoT(モノのインターネット)を活用した産業機器・FA関連部品向けも旺盛な需要が見込まれる。スマートフォン向けは、販売台数の鈍化で踊り場を迎えた。大口顧客の大きな回復はなさそうで、痛手は小さくない。  首都圏の再開発工事が活発なうえ、東京五輪・パラリンピック関連の工事が終盤に入り「工事量はピーク。忙しい1年になる」(大手ゼネコン幹部)。ただ、資材費や労務費は高止まり傾向にあり懸念材料だ。大手・準大手14社の2019年3月期連結業績予想は13社が増収も7社が営業減益の見込み。20年3月期は資材・労務費が想定内に収まれば業績の上振れもある。  出光興産と昭和シェル石油の経営統合で4月に新会社「出光昭和シェル」が発足し、JXTGエネルギーと2社で国内燃料油市場の8割強を占める寡占化が進む。過当競争が一掃され収益基盤は盤石。イラン情勢を背景に高騰した原油価格も2018年10月をピークに下降し、19年は1バレル当たり60ドル前後(ドバイ原油)で推移する見込み。燃料高による需要減退の懸念もなさそう。  付加価値の高い航空機リースや海外事業などが業績をリードする。2018年のリース取扱高は3年ぶりの増加に転じる見通しで、19年もこの勢いは続きそうだ。全体の約3割を占める情報通信機器でノートパソコンの需要が好調。キャッシュレス化の波を受けPOS(販売時点情報管理)端末のレジの需要増も見込めそう。過去最高益を見込む企業も多く、景況感は明るい。  新車市場は緩やかに回復しそうだ。世界販売台数は2018年見込み比200万台増の9500万台程度の見通し。中国・米国の2大市場も底堅く推移しそう。日本は消費増税と自動車税見直しが市場動向に影響する。トラックはタイやインドネシアなどは順調で、日本は電動車や自動運転の次世代トラック投入で市場が活性化する。一方、米国の通商問題がリスク要因だ。  世界的な人手不足を背景に工場の自動化に伴う需要は底堅く、ロボット導入による生産性向上や品質安定化へのニーズも高い。客先も自動車から、電機や食品産業などに広がり、IoT(モノのインターネット)や人工知能(AI)といった技術革新も導入を後押しする。米中貿易摩擦に伴う設備投資の様子見や景気減速の影響がどこまで広がるかが懸念材料だ。  2018年は快晴が続く常夏のようだった。機械商社などでは18年をピークとする予想が圧倒的に多い。19年の年間受注高は1兆5000億円規模(18年は約1兆8000億円)と、前年よりは少ないが高水準を維持すると予想する声もある。半導体関連は一服だが、日系車各社の設備計画が進む。米国との対立を深める中国は減速が続きそう。世界経済に波及すれば雨もありえる。  北米や東南アジアでの建機や鉱山機械の需要は底堅い。排ガス規制強化に伴う駆け込み需要の反動減が長引く日本は、首都圏開発などによる工事増で、建機レンタル会社が購買を増やす可能性がある。ただ、米中貿易摩擦が中国市場に水を差す懸念もある。中国政府がインフラ投資を継続するかが判明する春節明けの動向を注意深く見る必要がある。  国内の白物家電市場は2018年に出荷高で過去最高を記録した。夏の暑さは年々厳しさを増しており、19年の気温次第では記録更新もありうる。省エネルギー製品や高機能製品などへの買い替え傾向も続く。海外市場では白物家電の普及率が低い東南アジアが好調だが、中国や韓国メーカーによる低価格攻勢が日本メーカーにとって業績への懸念材料となる。  エネルギープラントの投資判断の目安とされる原油価格が一時期よりも下落しているものの、プラント受注環境の改善は続く。液化天然ガス(LNG)プラントの大型案件、石油化学や再生可能エネルギーなどの案件の積み上げも期待できる。ただ各社が苦戦した北米では人件費の高騰や労働力不足が続き、プロジェクト管理が課題となる。  石炭など資源価格の上昇を背景に業績は好調だ。石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟の主要産油国が、1月から6カ月間追加で協調減産することで合意。下落基調だった原油価格が下げ止まる兆しもある。一方、米中貿易摩擦が中国景気や国際金融市場に悪影響を及ぼし、世界経済の減速感が強まれば、資源価格が下落する恐れもある。  セメント協会によると2018年度のセメント国内需要は17年度見込み比0.5%増の4200万トンとなる見通しだ。東京五輪・パラリンピックに伴う関連需要は当初予想よりも出だしがかなり鈍いが、19年度も大きな落ち込みはない見込み。リニア中央新幹線工事による需要は長期間にわたるとみられ、都市再開発にも波及するなどセメント需要を支える柱として期待を持てそうだ。 米ボーイングの大型機「777」の減産が続いており、年初は停滞感が強い。ただ、2020年に初号機納入予定の次期大型機「777X」が本格化する年後半には、部品生産が動きだしそうだ。中大型機「787」が月産12機から14機に増えるのも好材料。エンジンの仕事が増えている中小企業もあり、1年を通してみれば安定した受注量は確保できそうだ。  10月に消費増税を控え、注文住宅では税率8%での請負契約期限である3月末前後に駆け込み需要と反動減が生じる。ただ前回の増税時より消費者の動きは穏やか。増税幅の小ささや低金利、政府の対策などを踏まえ警戒水準を下げた大手もある。分譲住宅やマンションは9月末引き渡しが税率8%の期限。だが都市部は増税後の引き渡し物件でも完売が続き、晴れ間がみえそう。  スマートフォン市場の停滞で、年半ばまではメモリー需給が緩む可能性が高い。米中貿易摩擦で米アマゾンなどがサーバー投資を抑制したことも響く。一方、第5世代通信(5G)が登場し、スマホなどのコンテンツのうち動画が占める比率が増え、中長期での需要は高まる。年末から2020年以降に、再び需給が逼迫する局面を迎えそうだ。 次ページ 雲行きが怪しいのはどの業界?  国内市場は人口減少や少子高齢化などで、大きな伸びが見込めないまま。原材料の高騰、人手不足による物流費や製造コスト負担も引き続きのしかかる。10月に消費増税を控えるが、食品関連は軽減税率が適用されるため増税自体の影響は軽微。ただ消費増税によって全般的に消費意欲は減退するため、食品にも少なからず影響を及ぼすだろう。  高機能繊維を中心に総じて堅調な需要を維持する見通しだが、原料価格の動向が読みづらい状況。炭素繊維は航空機向けの在庫調整が一巡し、風力発電翼や圧縮天然ガス(CNG)タンクなど一般産業向けの需要も底堅く推移する見込みだ。ただ、一般産業向けの炭素繊維の中でも汎用品の領域は新興メーカーとの競争が激化しており、利益確保に向けた差別化策が問われる。  2019年は景気の局面が変わる年になりそうだ。米中貿易摩擦と原料の先安観で顧客の買い控えを招き、16年から好調だった世界需要に陰りが出る。米国のシェール由来の安価な汎用樹脂がアジア市場へ流入する“黒船問題”で、年後半から市況は悪化する。脱汎用品ができている国内メーカーへの影響は限定的だが、安穏な1年とはいえない。  国内では特許が切れた先発品である長期収載品が、後発薬の普及で打撃を受ける傾向が続く。消費増税に伴い、市場実勢価格に基づいて薬価を引き下げた上で増税分を上乗せする措置も行われる見込み。日本市場、とりわけ長期収載品に依存している新薬メーカーは経営の厳しさが増す。一方で米国をはじめとする海外事業が堅調なメーカーもあり、優勝劣敗が鮮明になる。  ベースメタルの銅や亜鉛の需要は堅調。銅は車の電動化やIoT(モノのインターネット)の進展による需要増が期待される。アルミニウムは車向けは軽量化需要で好調だが、飲料缶向けはペットボトルコーヒーの人気に押され苦戦が続きそう。回復基調にあった金属価格が下落に転じ、2019年度の各社の業績には前年度ほどの勢いはない。  鉄鋼需要は東京五輪・パラリンピックや首都圏再開発中心に堅調に推移する。ただ原燃料・資材価格や物流費が高止まりし、利幅が削られる状況が続く。対米貿易摩擦の影響などで中国経済がさらに減速すれば、中国内でだぶついた鋼材が他のアジア市場へ大量に流出して市況を悪化させたり、同国内の設備投資関連需要が細ったりして、天気が急激に崩れる恐れもある。  脱炭素化の流れにどう向き合うかが問われる1年だ。金融機関が石炭火力への融資停止に動き、大口需要家の再生可能エネルギーへのシフトも鮮明になるなど事業環境に雲がかかる。米ゼネラル・エレクトリック(GE)や独シーメンスは人員削減や工場閉鎖を打ち出し、事業構造の転換を急ぐ。日系各社は受注残を抱えているが、中長期を見据えた脱炭素化時代への対応が必要だ。  消費増税を受けて企業業績が悪化すれば、事務機器市場も縮小すると懸念される。もともと市場成熟化でハード単体の伸びは期待できない。ただ、セキュリティー対策やクラウドサービスなどのITサービスと連携した複合機はニーズが高まっており、この分野の差別化がカギになる。成長分野である商業印刷機市場などの開拓も各社の優勝劣敗を左右する。  10月の消費増税を受けて値下げ圧力が強まりそう。国が医療機関に支払う特定保険医療材料の償還価格の改定が焦点。通常なら2020年の改定だが、増税を踏まえ、19年に同時改定する見通し。増税分と実勢価格に応じた機器の下落分を織り込むとみられ、実質的な値下げになる恐れがある。前倒しでマイナス影響を受ける格好となり、経営環境は厳しくなりそうだ。  電力業界では域外展開する電力大手と新電力が入り乱れる消耗戦が続く。新電力はスポット市場で高コストの電源を調達する場合もあり、今年も撤退する事業者がありそうだ。ガス業界は電力大手による巻き返しが強くなりそう。電力大手は液化天然ガス(LNG)の調達力で強みがある。都市ガス大手が電力会社と手を組み、新エリアを開拓する動きも進む。  マイナス金利の継続などで、メガバンク、地方銀行ともに業績の大きな回復は見込めない。2019年は現金自動預払機(ATM)統合などによる業務効率化やフィンテック(金融とITの融合)による収益力強化の正念場だ。株価は戦後最長レベルの好景気がどこまで続くかがカギ。米中貿易摩擦の長期化や、消費増税による景気の腰折れの懸念があり楽観視できない。  国内のコンビニ店舗数は5万5000店を超え、飽和状態に近くなっている。店員不足や人件費高騰、レジ袋有料化問題など逆風も吹く。店舗売上高はプライベートブランド(PB)商品や総菜が下支えする構図が続く。消費増税対策の軽減税率は、店内のイートインコーナーで飲食する場合は適用外だが、支払時の混乱は避けられそうにない。  書籍や雑誌など紙媒体の減少に伴い、純粋な印刷事業だけをみると暗雲が漂う。凸版印刷と大日本印刷の大手2社は印刷技術を応用した新事業の種まきや育成に力を注ぐ。IoT(モノのインターネット)技術を使った建材、RPA(ソフトウエアロボットによる業務自動化)ツールの提供、医療関連や情報銀行など、新事業が花開けば晴れ間ものぞきそう。  電子媒体への移行が進むチラシや雑誌、書籍向けの需要が底冷えし、2019年も雨が降り止まない。18年10月に、国内の洋紙販売が17カ月ぶりに前年同月の実績を上回ったが、下げ止まりと言えるほどの力強さはない。日本製紙連合会がまとめている出荷量も厚い雨雲の中。19年も新聞の発行部数の落ち込みが足を引っ張る。一方、景気低迷がなければ段ボール原紙は快晴。  秋に楽天が携帯電話市場に参入し、競争が激化する。既存3社は通信料と端末料を分離して通信料を最大4割安くする新料金プランを打ち出し、迎え撃つ構えだ。ただ、NTTドコモは新プラン導入によって一時的な減益を見込む。2019年に始まる第5世代通信(5G)関連需要が料金引き下げの影響をどの程度カバーできるかが、将来を左右する。  原材料価格や物流コストの上昇に伴う商品の値上げに加えて、消費増税もあり、全般的に消費者の購買意欲は弱まる。惣菜や弁当などの「中食」市場の伸長が売上高増に寄与するが、中食分野を強化しているコンビニエンスストアやドラッグストアなどとの競争は激化する。各社が独自色を出すのも難しく、生き残りをかけた提携やM&A(合併・買収)が進む。  造船業界は2008年のリーマン・ショック後から新造船発注が落ち込み、海上荷動きも低迷が続く。需給ギャップは解消されず、韓国や中国との熾烈(しれつ)な受注競争が続く。市場船価の回復は難しいだろう。為替が円安に振れれば利益にプラスになるが、19年も我慢の年になる。期待できるのは、20年に強化される硫黄分濃度規制を見据えた環境対応船の需要だ。

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