プリファード・西川氏「誰もが自在にロボット動かす世界つくる」

【連載#5】ポスト平成の経営者 プリファードネットワークス社長・西川徹氏

 プリファードネットワークス(PFN)はディープラーニング(DL)を核に、多様な先端技術へ縦横無尽に取り組む。高度な技術は、トヨタ自動車など提携する大企業を引きつけている。“天才エンジニア集団”を率いる西川徹社長にビジョンを聞いた。  -人工知能(AI)やロボット、DL専用チップなど増え続ける開発案件に、どう組織を動かしていますか。  「今、社員は約200人。DL用チップ『MN-コア』の開発を始めた2年前、チップのコードを書ける経験者は社内にいなかったが、『やるしかない。必要な人は来てくれるだろう』と思って始めた。そして学生時代に『すごい人だ』と思っていた日本IBM出身の名村健シニアエンジニアに一生懸命お願いして、来てもらえた。他の場合も、要所要所で優秀な人が来て、さらに人が集まるサイクルとなっている。不安はない」  -チップまで自前で開発することに、本当に驚きました。  「MN-コアのプロジェクトはずっと表に出せず、採用も本当に大変だった。PFNの企業規模でチップを開発していると言うと、FPGA(プログラミング可能なLSI)だと思われる。だが、12月の展示会『セミコンジャパン』で、回路線幅12ナノメートル(ナノは10億分の1)プロセスでやっていると公表して、本気度を示せた。ツイッターも盛り上がっていたので、多くの応募が来ると思う。MN-コアでクラウドでの計算量を爆発的に高める」  -AI人材は世界的な争奪戦です。日本で人は集められますか。  「学び合える環境を大事にしていることが良い効果を生んでいる。エンジニアは新しいことが好き。すごい人しか採らないので、私自身も驚きの連続だ。研究案件のチャットは自由に閲覧でき、徹底的に壁をなくしている。日本はモノづくりのノウハウが豊富で、アニメなどの文化的な要素の研究もロボットに好影響を与える。アニメとAIが両方できそうだという理由で、中国から来た社員もいる。エキサイティングなテーマを設定できれば、日本が中心になることは難しくない。ハードとソフトの両方への理解が深く、事業成長できる場所は世界にそうない」  -アニメがどのように関係するのですか。  「アニメは、人に受け入れられやすい動きをかなり研究している。例えば、人は水の入ったペットボトルを真上に持ち上げるが、そのままアニメにすると不自然。そこで、少し下に傾けて、“ちょっと重そうだ”という情報を記号化する。それから持ち上げると、自然に見える。映画などを制作するクラフターの古田彰一社長に、人を真似ればいいわけでないと聞いて、驚いた。人が見て、『ロボットは次にこう動くだろう』と予測できる動きにできれば、人とロボットが共生しやすい」  -生活の中にロボットが入ってくると、何が変わりますか。  「散らかった部屋を片付けるロボット『お片付けロボット』は、実用化まで長くて5年と見ている。ロボットは周囲を認識してデータ化し、アクションを起こせる。バーチャルな世界で培われた先端技術と、現実世界がロボットを介してつながれば、インパクトが大きい。パソコンやスマートフォンが世界を変えたように、ロボットで技術も社会も進展させたい」  -ロボット技術にどこまで自前で取り組みますか。  「PFNの画像認識技術は世界トップレベルで、現在、音声認識技術のレベルも高めている。ハードの開発部隊もいる。必要な技術は一通りそろう。ロボットをどう調達するか、PFNがどこまでハードウエアに関わるかなどは今後検討していく。最速で普及する道を選ぶ」  -ロボットに仕事を奪われると思う人もいます。  「人の体は優秀だ。ロボットが人間を超えることは当分ない、人の代替ではなく、ロボットを使った産業がたくさん生まれるだろう。生産性を上げて、産業を大きくし、人がやりたくない仕事を肩代わりする。人がやるべきことに集中できるようにする」  -ロボットと共生する社会の将来像は。  「誰もがコードを書き、自由自在に自分で自分のロボットを動かせるようにしたい。誰もが自分の仕事を自動化できれば楽しい。これに向け、PFNはDLの敷居を下げるための開発を続ける。DLは、プログラムを書くことをより簡単にできる。一方で、プログラミング教育が一大産業になっており、数年後には世界中のほとんどの人がプログラムを書けるようになるだろう。この動きがロボティクスの世界と結びつく」  「そんな世界がどんなものか想像もつかないが、その世界を僕らはやっていきたい。想像のつく部分は誰かがやる。自分たちもどうなるかわからないゾーンが、非常にエキサイティングだ。誰もがプログラムを書ける世界では、プログラマーも進化して、想像もつかないプログラマーが出てくる」  -大企業とも多く提携しています。同じ日本の企業として引き継ぎたいことは。  「世界で勝負して勝っていく姿を見て、そういうところを目指したいと思った。ファナックと協業を始めた時、PFNは30人くらいだった。ファナックがそこに賭けて、一緒に伸ばす決断をできること自体に衝撃を受けた。決断力も胆力も技術への探究心も、学ぶべきところがたくさんある」 激動の平成を支えたベテラン経営者と、今後を担う若手経営者に「ポスト平成」への提言・挑戦を聞くインタビューシリーズ

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