ゴーン逮捕、万博決定…産業界10大ニュースで振り返る激動の1年

1位、2位は2019年も注目

1位はやはり…ゴーン会長逮捕

 日刊工業新聞社は2018年の10大ニュースを選定した。1位には日産自動車元会長のカルロス・ゴーン容疑者の突然の逮捕を選んだ。米中貿易摩擦の泥沼化や自然災害の多発などマイナスの話題が目立つ一方、底堅い景気や万博の大阪開催決定などもあり、明暗がくっきり分かれた。30日に米国を除いた11カ国による環太平洋連携協定(TPP11)、19年2月に欧州との経済連携協定(EPA)発効を控え、企業の積極的な海外M&A(合併・買収)や思い切った制度改正も進んだ。  日産自動車前会長のカルロス・ゴーン容疑者が、役員報酬を過少に記載したとして金融商品取引法違反で11月、東京地検特捜部に逮捕され、国内外に衝撃が走った。今月21日には特別背任の疑いで再逮捕され、年明けまで拘留が続く。不正の根底に仏ルノーとのいびつな資本関係があるとみる日産と、影響力を維持したいルノーの対立激化が懸念される。日仏連合が“ゴーン・ショック”を乗り越えられるか、注目される。  米中摩擦が激化の一途をたどった。トランプ米大統領は3月の鉄鋼・アルミニウムへの追加関税発動を皮切りに圧力を強化。中国も報復措置で応じる中、米国は知的財産権侵害などへと争点を広げている。12月の首脳会談では摩擦解消をうたったが、直後に米国の要請でカナダが中国・ファーウェイ副会長を拘束する事態に至った。政治・経済・安保など全領域で両国の覇権争いは先鋭化しており、世界経済の最大の不安定要因になっている。  18年の工作機械受注額、半導体製造装置出荷額(世界)、白物家電出荷額(国内)は過去最高となる見通しだ。世界経済の拡大を背景に輸出が堅調で、企業収益も高水準を維持した。先行きは米中貿易摩擦や人手不足の深刻化など懸念要因も少なくないが、すでに「いざなぎ景気」を抜いて戦後2番目の長さとなった現在の景気拡大は、12月の政府の月例経済報告によると戦後最長の「いざなみ景気」(6年1カ月)に並んだ可能性が高く、底堅い動きが続いている。  産業界を揺るがす品質不正、データ改ざん問題は18年も多発した。日産自動車や三菱マテリアルなどで新たな不正が発覚したほか、日立化成、フジクラなどが検査データ改ざんを公表。10月にはKYBや川金ホールディングスで免震・制振装置のデータ改ざんが明らかになった。背景には行きすぎたコストダウン、人手不足、納期至上主義、コンプライアンス(法令順守)意識の欠如などがあるのではと指摘されている。高品質を強みとしてきた日本製造業の基盤を揺るがす深刻な事態だ。  武田薬品工業が総額約7兆円でアイルランドの製薬企業「シャイアー」の買収を決定。19年1月には日本の企業から売上高で世界トップ10に入るメガファーマが誕生する。創業家の反対を押し切り、12月の臨時株主総会では約88%の賛成で承認を得た。18年はこのほかにも日立製作所がスイス・ABBの欧州送配電事業を、ルネサスエレクトロニクスが米IDTを、大陽日産が米プラクスエアの欧州事業を買収している。日本企業の海外M&Aは過去最高水準に達した。  大阪北部地震(6月)、西日本豪雨(7月)、北海道地震(9月)や強い台風の上陸と、日本列島を相次ぐ災害が襲った。西日本豪雨では鉄道、道路の寸断や工場の操業停止で経済活動が停滞。北海道地震では北海道電力の苫東厚真発電所の被災が道内全域の停電「ブラックアウト」を引き起こした。自然災害の影響で9月には訪日外国人(インバウンド)の数も減少した。政府は災害の頻発に対し国土強靱(きょうじん)化の緊急対策に3年間で7兆円を投じる計画だ。  大阪・関西が悲願の万博開催を勝ち取った。11月23日(日本時間24日未明)にフランスのパリで開かれた博覧会国際事務局(BIE)総会で、競合するロシア・エカテリンブルクやアゼルバイジャン・バクーを抑えて2025年の国際博覧会(万博)の開催地に決定。大阪での開催は1970年の「大阪万博」以来、55年ぶり2回目だ。万博開催は関西経済浮上の起爆剤となるだけでなく、2020年東京五輪・パラリンピック後の日本経済の景気刺激策としても大きな期待がかかる。  京都大学の本庶佑特別教授が10月にノーベル生理学医学賞に輝いた。日本からの受賞は26人目となる。本庶特別教授は免疫反応を抑えるブレーキ役の分子「PD―1」を発見。この分子の働きを阻害することによって免疫反応を引き出すがん免疫療法薬「オプジーボ」の開発にも大きく貢献した。3日には若手研究者の自由な基礎研究環境を整えたいとの考えから、ノーベル賞の賞金を原資に一般の寄付も募る「本庶佑有志基金」が京大で設立された。  外国人の就労拡大を目的とする改正入国管理法が12月に成立した。新たな在留資格「特定技能」で単純労働も認め、5年間で34万人の受け入れを見込む。深刻な人手不足の緩和が期待される一方、国のあり方に関わる制度改正に、国会やメディアで激しい議論が繰り広げられた。産業関連では働き方改革関連法、中小企業の事業承継税制抜本改正、統合型リゾート実施法など重要な制度の見直しが続き、経団連も1953年以来の就活ルールの廃止を決定した。  18年は人工知能(AI)、ロボットの普及が深化した1年となった。AIは従来はクラウドにデータを集めて巨大な計算機を回す技術が中心だったが、スマートフォンなどユーザーの手元にも搭載され、クラウドと端末の両方に浸透した。ロボットも自走式の清掃ロボットや警備ロボットなどを三菱地所や三井不動産、西武鉄道などがサービスロボットを自社施設に実験導入した。AI、ロボット技術を活用した自動運転の実証も盛んに行われ、乗り物のサービス「MaaS」が脚光を浴びた。 ■WRSプレ大会開く  世界のロボット技術を日本に集め、社会課題解決につなげる国家イベントとして20年に開催予定の「ワールド・ロボット・サミット」(WRS)のプレ大会が10月に開かれた。経済産業省が推進する同大会に23カ国から126チームが参加。多様な技術・アイデアを駆使し、日本発のオープンイノベーションの可能性を示した。 ■TPP11、いよいよ30日発効  米国を除く11カ国による環太平洋連携協定(TPP11)が30日に発効する。域内GDP10兆ドルの巨大市場が出現する。19年2月にはTPP11をさらに上回る経済規模の日欧EPAも発効する。TPP11を主導してきた日本は貿易拡大が期待できる一方、国内1次産業の振興などが不可欠。2国間協定を志向する米国との関係も課題となる。 ■iPS細胞 臨床本格化  iPS細胞(人工多能性幹細胞)の臨床応用へ向けた研究が大きく前進した。5月に大阪大学の沢芳樹教授らの重症心不全の研究計画が、9月に京都大学の江藤浩之教授らによる再生不良性貧血の研究計画が承認。19年には慶応義塾大学の岡野栄之教授らの臨床研究も始まる見込みで、iPS細胞による再生医療が現実に近づいた。 ■仮想通貨、580億円流出  外部からの不正アクセスにより、コインチェックが顧客から預かる約580億円相当の仮想通貨「NEM(ネム)」流出が1月に発覚。システム管理の不備やセキュリティーの弱さ、顧客保護の視点の欠如などが厳しく問われた。金融庁は再発防止のため業務改善命令の発出など規制を強化したが、業界の信頼度は著しく低下した。

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