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統計から見る、食品卸の取引多層化

 経済産業省の統計によると。食料品流通業は2014年から緩やかな上昇傾向にあったが、内訳系列で見ると上昇しているのは卸売業であり、小売業は低下傾向が続いている。また、さかのぼると2011年から2013年にかけての時期は、小売業が緩やかに上昇している一方、卸売業は低下傾向だった。このように、同じ食料品流通業で卸と小売の動きに乖離があるのはなぜだろうか。

 今回は好調である飲食料品卸売業に注目し、飲食料品卸売業をさらに2つの内訳業種に分けて、その動きと取引先の構造をみていきたい。

 飲食料品卸売業は穀物、肉・魚、野菜・果物などの1次産品を扱う「農畜産物・水産物卸売業(紫点線)」と、調味料、飲料、菓子、パン、乾物などの二次加工品を扱う「食料・飲料卸売業(緑点線)」に2分することができる。

 農畜産物・水産物卸売業は2013年以降低位のまま推移している。他方で、食料・飲料卸売業は2010年から上昇傾向、特に2014年以降の指数水準は急上昇していることがわかる。
               

 商業動態統計の販売額から物価上昇分を割り引いて実質化した飲食料品卸売業の構成比をみると、2017年で農畜産物・水産物卸売業が31%、食料・飲料卸売業が69%と7割弱が食料・飲料卸売業であり、その割合は増えてきている。

 最近の飲食料品卸売業好調の動きは「食料・飲料卸売業」の上昇に支えられていたようだ。業種別の販売先割合を見ると、特徴的なのは、本支店間移動を含む、卸売業内での販売の割合が多いということである。卸売業は、産地から消費地までの移動全体を担うビジネスなので、卸売業内での取引が多層構造になっている。

 「最終消費者への販売」という小売業の定義からして、小売業は多層構造にならない。この違いが、食料品流通における卸と小売の動きの違いの背景にある。

 また、それだけではなく、農畜産物・水産物卸売業では、小売業者向け取引は3割程度、食料・飲料卸売業でも5割程度にとどまっており、小売業者以外への販売もかなりのウェイトを占めていることが見て取れる。それが、「産業使用者向け」であり、ともに1割ほどを占めている。
              

 つまり、卸売業者のビジネス相手は小売業者だけでなく、食品工場や外食産業に販売することもある。このように飲食料品の卸売業の取引先の構造からして、食料品流通業において、卸と小売の動きに乖離があることにも納得いたただけるのではないだろうか。
神崎明子
神崎明子 Kanzaki Akiko 東京支社 編集委員
経済解析室で試算しているフード・ビジネス・インデックス(FBI)の2018年上半期の結果は、FBI総合が指数値101.5、前期(2017年下半期)比0.8%と3半期連続の上昇となったが、そのけん引役となったのは食料品流通業だった。

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