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放送局次第だが…4K8K市場に期待する機材メーカー

対応製品市場は3.7倍増の見通しも
放送局次第だが…4K8K市場に期待する機材メーカー

富士フイルムが開発した8K対応の箱形レンズ

 12月1日に始まった超高精細の映像が楽しめる4K・8K実用放送。4K対応テレビが脚光を浴びるが、放送用カメラなど業務用機材を手がけてきたメーカーも放送開始に合わせ、ここ数年は着々と製品展開を進めてきた。

 富士キメラ総研(東京都中央区)によると4K8K対応製品の国内外の市場規模は、2025年までに17兆4492億円と、16年比3・7倍に拡大する見通しだ。これは業務用機材を手がけてきたメーカーにとって大きな商機になる。

 ソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズの河野弘副社長は「(業界は)節目にある」と指摘する。4Kイメージセンサー搭載のカメラや4K番組用のレコーダーなどで、映像制作の効率化と高画質化をこれまで以上に追求する。

 キヤノンは業務用カメラ「XF705」を発売した。4Kの高精細映像をSDカードに圧縮記録でき、業務用カメラの旗艦モデルとして約8年ぶりにリニューアルした。19年には業界最高峰の122倍ズームを実現した箱形レンズも投入する。

 富士フイルムは「フジノン」ブランドから、同年に業界最高クラスの46倍ズームが可能なポータブルレンズを投入する計画。8K向けには高精度で研磨した数十枚のレンズで構成する8K対応の放送用箱形レンズも開発。11月に開かれた映像機器展示会「インタービー」で披露し、来場者の関心を集めた。

 ただ、放送用機材が充実しても、4K8K放送の普及自体はまだ先になりそうだ。課題となるのが番組などのコンテンツ。特に8K放送は「制作側がNHK以外でどれだけ出てくるかがカギとなる」(電機メーカー幹部)といった見方もある。

 19年はラグビーワールドカップ、20年には東京五輪・パラリンピックが控えている。スポーツイベントを契機にコンテンツをどこまで充実できるか。そのための設備投資に放送局側がどこまで踏み切れるのかが、業務用機材市場の成長を左右しそうだ。
(文=杉浦武士)
日刊工業新聞2018年12月19日
梶原洵子
梶原洵子 Kajiwara Junko 編集局第二産業部 記者
富士キメラの数字は放送用カメラ以外も入っていると思うので、難しいですが、地デジ化の時に導入した機材の更新時期にもあたるため、業界の期待が大きいのは事実です。先日、家電量販店に取材に行ったところ、現在4Kチューナー内蔵してない4K対応テレビも売れているそう。「観たい番組ができたら、チューナーを買おう」という消費者が多いのだとか。医療向けも期待されています。                         

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