投資家が企業に求める「気候変動リスク」開示、何が変わる?

【最終回・連載#11】脱炭素経営 パリ協定時代の成長戦略

環境省のシンポジウムに金融機関も登壇する(6月)

 2015年末の「パリ協定」採択後、温暖化をめぐるイベントに金融機関も登場するようになった。11月末、環境省が企業向けに開いたシンポジウムにも世界最大の機関投資家である年金積立金管理運用独立法人(GPIF)の小森博司市場運用部次長が登壇し、「対話のために情報開示が不可欠」と訴えた。  食品メーカーならば猛暑で作物の収量が減ると原料調達に支障が出る。渇水になると水を大量消費する半導体メーカーは操業ができなくなる。こうした気候変動リスクの情報開示を投資家が企業に迫っている。  投資家の関心が高いのがTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)だ。主要国の中央銀行や財務省が参加する金融安定理事会が設立したTCFDが17年、企業財務への気候変動の影響を予測し、開示する提言を公表した。この提言が開示の世界標準となる。  「二酸化炭素(CO2)排出量に応じて課税する炭素税が導入された場合のコストは」「電気自動車の充電器の設置が義務化された場合は」―。MS&ADインターリスク総研(東京都千代田区)が開いたTCFD対策セミナーで、企業からの参加者が次々とリスクを挙げた。自然災害以外に新たな規制も財務に影響する。  MS&ADインターリスク総研の寺崎康介上級研究員は「企業は気候変動リスクを真剣に受け止めてきた」と感触を話す。企業には誤解を避けようと将来の不確実なリスクの公表を控える傾向があるが「投資家はリスクゼロの開示を求めていない」(寺崎上級研究員)と指摘する。気候変動を経営問題として認識した企業は、対策も考えていると評価できるからだ。  実際に投資家が企業活動を変え始めた。環境省のシンポジウムで丸井グループの加藤浩嗣取締役上席執行役員は「『安いが、CO2の多い電気を買っている』と投資家から経営者が指摘を受けた」と明かした。投資家との対話後、CO2排出の少ない電気を選ぶことにし、7月に事業で使う電気全量を再生可能エネルギーにする国際組織「RE100」に加盟した。  TCFDの提言には金融庁や環境省、MS&ADインシュアランスグループホールディングスなど日本の主要金融機関が賛同を表明しており、企業は気候変動リスクを開示しないと資金調達で不利になる恐れがある。パリ協定後の変革に乗り遅れないためにも、脱炭素経営への移行が急がれる。 (以上、編集委員・松木喬が担当しました)

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