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平成最後の国の予算は大盤振る舞い?!財政健全化はどこに?

当初案、一般会計の総額が初の100兆円超えへ
平成最後の国の予算は大盤振る舞い?!財政健全化はどこに?

経済財政諮問会議などの合同会議で発言する安倍晋三首相(左手前から2人目=11月26日、首相官邸)

 平成最後となる2019年度当初予算案は、一般会計の総額が初の100兆円超えになる見通しだ。19年10月に予定する消費税率10%への引き上げに備える景気対策に加え、高齢化の進展に伴う社会保障費の増加などで歳出が膨らむためだ。政府・与党は、12月下旬の予算案決定に向け調整を本格化させるが、さまざまな歳出圧力の中で、“焦眉の急”だったはずの財政健全化がかすんで見える。

 経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)は、消費増税前後の駆け込み需要と反動減を抑える対策の実施を盛り込み、19年度当初予算で手当てするとした。政府は消費税率を5%から8%に引き上げ、景気を冷え込ませた14年と同じ轍(てつ)を踏まないよう「対策に万全を期す」(安倍晋三首相)構えだ。

 景気対策の規模は上限を設けていない。そのため、14年の消費増税時に実施した経済対策が5兆円規模だったことを念頭に、今回はそれ以上に膨らむと見る向きがある。

 18年度の一般会計予算は約97兆7100億円。19年度も前年度並みの水準と仮定し、これに5兆円の景気対策費を上乗せすると、それだけでも102兆円を上回る。

 政府は消費増税に合わせ、飲食料品などを税率8%に据え置く軽減税率のほか、中小小売店でのキャッシュレス決済時のポイント還元などを柱とする景気対策を実施する。

 19年度当初予算案をめぐり、歳出を押し上げる要因は、消費増税による需要変動を抑える対策だけではない。高齢者が増え、医療・介護費を中心に社会保障費が前年度から5000億円程度膨らむ見通し。

 18年夏に相次いだ自然災害を受けて取り組む老朽化したインフラの補修対策では、今後3年間で3兆円超の予算を投じるが、このうち1兆円については、19年度当初予算案に盛り込む方針。さらに非核化の進展が不透明な北朝鮮情勢を見据え、防衛費も増額になる公算が大きい。

 消費増税を実現しても、それに併せて歳出が膨らみ、財政再建の足取りは鈍い。こうした中、消費税率が3%ポイント引き上がった14年に比べ、19年は引き上げ幅が2%ポイントにとどまるとし、景気対策と銘打った「巨額の財政出動は必要ない」(有識者)との指摘も相次いでいる。

(文=編集委員・碩靖俊)
日刊工業新聞2018年12月6日

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