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クモの糸よりも強い“ミノムシ”の糸

新しい繊維素材として実用化を急ぐ
 興和(名古屋市中区、三輪芳弘社長)と農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)は5日、クモの糸をしのぐ強度を備えたミノムシの糸を産業利用するための基本技術を開発したと発表した。1匹のミノムシから長さ数百メートルの糸を真っすぐな状態で効率良く採取できる。自動車部品などに使用する繊維強化プラスチック(FRP)用の強化繊維などでの用途を想定。石油に依存しない繊維素材として、早期の実用化を目指す。

 同日、都内で記者会見した興和の三輪社長は「他社との連携も視野に入れている」と今後の方針を表明した。農研機構の久間和生理事長は「生物機能の活用による新産業の創出につながる成果だ」と期待を示した。

 ミノガ科のガの幼虫であるミノムシは、カイコやクモと同様にたんぱく質で構成されたシルク繊維を吐出する。糸の直径は約4マイクロメートル(マイクロは100万分の1)。カイコは約1500メートルの糸を吐き出すが、吐出は1回限り。これに対しミノムシからは糸を複数回採取できる。またクモは共食いするため大量飼育が難しいが、ミノムシにその心配はないという。

 通常、ミノムシの糸はジグザグ状になるが、特定の道を与えると糸を直線状に吐き出すことを発見。数百メートルの真っすぐな糸を取り出すことに成功した。
握手する興和の三輪社長(左)と農研機構の久間理事長
日刊工業新聞2018年12月6日

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