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免震ゴム偽装から4年、新社名「TOYO TIRE」で再出発へ

三菱商事との提携追い風
免震ゴム偽装から4年、新社名「TOYO TIRE」で再出発へ

東洋ゴムが強みとする大口径タイヤと清水社長

 東洋ゴム工業は2019年1月1日、社名を「TOYO TIRE(トーヨータイヤ)」に変更する。清水隆史社長は「19年は第2創業の年」と決意を示している。免震ゴム性能偽装問題の発覚から約4年経った。免震ゴム交換・改修工事は19年中に完了する見通しとなり、他の産業素材事業の売却も進んだ。筆頭株主となる三菱商事との提携を追い風に、タイヤと自動車部品に特化する新体制で再出発する。

 ここ数年は免震ゴム問題の印象が強かった東洋ゴム工業だが、売上高の約8割はタイヤ事業が占める。中でも世界で販売が伸びるスポーツ多目的車(SUV)など大型車用のタイヤが強みだ。

 タイヤ事業の好調により、免震ゴム問題発覚後も営業利益率は10%以上を維持してきた。累計1400億円以上にのぼる免震ゴム問題対策費も今後、大きく増えることはなさそうだ。タイヤを中心とする自動車関連事業に特化して、前を向いた経営に集中する環境は整いつつある。

 ただ、タイヤ業界は新興勢力の台頭により収益が下がる傾向にある。清水社長も「競合他社はソリューションビジネスへの移行やデジタル化による生産性革命の先行投資を進めており、予断を許さない状況」と警戒する。そこで選択したのが、海外販売などで長く協力してきた三菱商事との資本業務提携だ。

 11月に結ばれた同提携の内容は海外販売、技術・製品開発、ガバナンス強化など経営全般に及ぶ。免震ゴム問題のために遅れた成長を、三菱商事の力も借りて一気に取り戻したい意図が伝わる。

 特にタイヤの供給力不足解消には、三菱商事が出資する約500億円を充てて対策を急ぐ。米国、マレーシアの工場を増強し、生産拠点のない欧州にも工場を新設すると見られる。欧州の新工場は19年6月頃に着工し、21年めどに稼働する考え。19年内には、ドイツに市場調査と研究開発のための拠点も設置する。欧州は中東向けタイヤも生産し、両地域で年間計1000万本規模の販売を目指す。

 マレーシアでは20年から工場の新棟に国内の軽自動車用タイヤに使う設備を導入し、コスト力のある乗用車用タイヤを生産する。三菱商事の販売網を生かし、開拓し切れていない欧州、中東、アジアの事業拡大を狙う。

 免震ゴム関連の不祥事発覚から約4年を経て、新たな成長戦略を打ち出した東洋ゴム工業。清水社長は「顧客の信頼を失う経験をしたが、代わりに得たものも大きかった」と、社内改革の進展に自信を見せる。車業界が大変革期を迎えている中、もう躓(つまず)くことはできない。

(文=大阪・錦織承平)
日刊工業新聞2018年12月7日

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