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重工業のIHIがデザイン思考導入へ、その狙いとは?

東北芸工大とビジネスパートナー協定
重工業のIHIがデザイン思考導入へ、その狙いとは?

IHI横浜エンジニアリングセンターにある「IHIつなぐラボ」

 IHIは東北芸術工科大学と連携協定を結んだ。ユーザー視点で製品を開発する「デザイン思考」を研究開発に取り入れ、課題解決型のビジネスモデルを創出する一方、山形銀行の協力を得て、地域の中小・ベンチャー企業を巻き込んだ新事業育成を目指す。IHIは機器供給主体の事業モデルからの脱却とイノベーションによる地方創生の両立を見込んでおり今後、同様の取り組みを全国に広げていく方針だ。

 東北芸工大に共同ラボ「ITOラボ」を開設し、2019年から本格始動する。月内にIHIの技術開発本部と大学の教授、学生を主体としたワークショップを実施し、具体的テーマを詰める。IHIは重厚長大産業の殻を破り「モノ売りからコト売り」へのアプローチを探る。

 IHIが東北芸工大と結んだのは「ビジネスパートナー協定」で、大学と同協定を結ぶのは初。従来、オープンイノベーションの窓口は主に技術開発本部が担ってきたが、今回はグローバル・営業統括本部が参画し、事業化を前提に協業を進める。

 山形銀行や自治体など地域のネットワークを生かし、地場企業の参画も促す。資金調達に苦慮している中小・ベンチャー企業は多く、大企業の経営資源や大学・研究機関の知見を組み合わせることで、早期事業化に結びつく可能性がある。

 IHIは14年にIHI横浜エンジニアリングセンター(横浜市磯子区)に「IHIつなぐラボ」を開設するなどオープンイノベーションを推進している。17年度から斎藤保会長が旗振り役となり、地方創生にもつながる新たな連携モデルを探ってきた。
日刊工業新聞2018年12月3日
梶原洵子
梶原洵子 Kajiwara Junko 編集局第二産業部 記者
資源・エネルギー向け機器や社会インフラビジネスなど重工業が主体のIHIが、人間を中心に考える「デザイン思考」を導入してどう変わるのか。とても興味深い取り組みです。

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