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FIT契約終了の顧客つなぎとめ、電力大手の有効策は異業種連携!?

中部電力はイオンと提携
FIT契約終了の顧客つなぎとめ、電力大手の有効策は異業種連携!?

中部電力はイオンと卒FITの再生エネを活用する新サービスで基本合意した(11月12日の記者発表会)

 中部電力とイオンは、再生可能エネルギーを活用した新サービス提供で基本合意した。2019年11月に固定価格買い取りが順次終了する家庭での太陽光発電の余剰電力を、中部電が引き取ってイオン店舗へ提供するほか、取引量に応じてイオンの電子マネー「ワオン」のポイントを提供する。

 同サービスは19年11月に中部地区で始める。中部地区で19年度に固定価格買い取り終了するのは約10万件の見込み。中部電は付加価値のあるサービスで買い取り終了する顧客との取引につなげる。

 イオンはワオンポイントのほか、省エネ家電の買い替え用クーポン提供やイオン銀行のリフォームローンでの金利優遇も行う。イオンは50年までに店舗で排出する二酸化炭素(CO2)排出量を総量ゼロにする目標を掲げている。今回のサービスをCO2排出量削減に活用する。
日刊工業新聞2018年11月13日
江原央樹
江原央樹 Ehara Hiroki 日本能率協会コンサルティング
2009年から開始された再生可能エネルギーの余剰買取制度により導入された10kW以下の家庭用太陽光発電設備の発電電力について10年間の買取期間満了により2019年からその行き先が多様化する。大きく対応は二つに分かれる。一つは、各家庭が、電力小売事業者と個別の電力供給契約を結び卸売をする電力販売のケース。電力を売るという意味ではこれまでとあまり変わらないが、買取価格や供給条件等が小売事業者によって異なり選択肢が増える。ただし、余剰買取制度ほどの高値では買い取ってもらえない可能性が高い。 また、もう一つの対応は、電力を販売するのではなく自宅で使い切る、自家消費に切り替えるケース。この場合、太陽光発電は、電力消費が比較的少ない昼間に発電量が多くなることから、消費量の多い夜や朝に利用できるよう蓄電システムの導入や自家消費用の電気工事等が必要になる。しかし、災害時のエネルギーの確保や環境保全への貢献といったメリットもあり、売電から自家消費への動きも今後増えてきそうだ。そのような見通しの中、今回の中部電力とイオンのように、電気小売事業者と異業種の事業者とのコラボレーションによるエネルギー以外の購買行動につながる新しいポイント、クーポン、金利優遇等のサービスの提供は、電力販売ケースの選択肢として有力であり、購買行動以外にも各家庭のライフスタイルや嗜好に沿った多様なソリューションサービスの商品化の可能性を感じさせるものである。

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