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新卒採用、“学業重視”を当たり前に

“自己PR重視”の採用ばかりでは企業と学生のミスマッチを解消できない
新卒採用、“学業重視”を当たり前に

テックオファーの利用イメージ(テックオーシャン提供)

 自己PRよりも学生の学びを重視―。テックオーシャン(東京都杉並区、長井裕樹社長、03・6383・0433)は、企業と工学・情報科学系の学生のマッチングに特化した就職情報サイト「TECH OFFER(テックオファー)」を開設した。国内大学の工学・情報科学系研究室約2万5000件の情報と技術系キーワード約100万件をもとに、学生が修めている学問・研究分野から企業が求める人材を検索できる。開設1年で学生の登録者数3000人超を目指す。

企業の技術力向上へ


 テックオファーは、工学・情報科学の情報を軸とした就職・採用活動のプラットフォーム。大学で培った知識や研究成果を重視した採用を企業に促し、技術力の向上に貢献する。

 研究室や学術分野の情報をもとに、独自のデータベースを構築。利用企業は工学や情報科学に関係するキーワードを10件程度登録し、条件に一致する研究分野や研究室を検索する。既存のプラットフォームと比べて、企業が求めている知識を持っている学生をよりピンポイントに探すことができる。

 企業の利用料金は、年度基本利用料が20万円から。さらに、成功報酬型などの利用プランの金額が加わる。

提案先は工学・通信系以外にも


 テックオーシャンでは、工学・通信系以外の企業にも利用を提案する。同社の長井裕樹社長は、「化学メーカーにおけるプラントエンジニアなど“企業の表看板からずれている”業種に適した人材確保は大手企業でも難しい」と語る。採用活動を効率的に進められるため、採用に十分な時間や労力を割けなかった中堅・中小企業からも好評を博している。

 就職活動の本格化する前の2019年1―3月頃にさらに利用者が増加すると見込んでいる。

採用と教育の好循環


 テックオファーをきっかけに、企業と研究室の産学連携が進む可能性もある。共同研究や授業への技術者派遣など、優れた技術を持つ企業が技術系学生の教育に積極的に関わることで、大学の競争力や学生の修学意欲の向上に役立つ。

 長井社長は、化学メーカーの技術エンジニアを経て、理系学生の採用支援や製造・建設業のエンジニア向けの情報サイト運営に携わってきた。その中で、多くの企業が新入社員の“学び直し”に時間をとられていることに懸念を抱く。「現在の就職活動を手がかりに採用と教育の好循環を作りたい」(同)という思いから、企業・学生が学問をきっかけに出会える仕組みを作った。

 現在多くの企業が、学生の自己PRを採用の可否を決める重要な材料としている。自己PRが苦手な学生の中には、学業に重点を置いた評価に喜ぶ人も多そうだ。モノづくり分野において、イノベーション創出へのプレッシャーや人手不足、少子高齢化は悩みの種。優秀な若い人材をどのようにして確保するのか、模索する企業にとってテックオファーが救いの一手になるのかもしれない。
日刊工業新聞2018年12月4日掲載記事に加筆・修正
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
就活サイトに関する取材の中で、「就活セミナーなどに足を運ばない学生の興味をいかにして引きつけるかが重要」というよく話を耳にします。テックオファーの場合は、学業と就職活動の“対立図”をできる限り解消することで学生の関心を引きつけようと試んでいます。また、実学系の学問を修めていても、研究分野に関連する職業に就けない学生は多いようです。自分の知識や研究成果はどの業界・企業から求められているのか、学生が気付ける機会は今後増えていくのでしょうか。 テックオファーURL=https://techoffer.jp/

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