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「究極のリラックスには感性の数値化が必要」TOTO、人間工学で新しい入浴文化提案

「究極のリラックスには感性の数値化が必要」TOTO、人間工学で新しい入浴文化提案

佐倉工場のプレス成型加工。ツヤのあるきれいな浴槽ができる

 TOTOが新しい入浴文化の提案を進めている。8月に発売した高価格帯バスルーム「シンラ」は人間工学を取り入れた新たなコンセプトを前面に、発売3年目の2021年に約2万1000台の販売目標を掲げる。ユニットバスルームを設計・製造し、シンラの生産を手がけるTOTOバスクリエイトでは、これまで培ったノウハウを生かし、新たな市場開拓を支えている。(高島里沙)

感性を数値化


 「究極のリラックス・リフレッシュを提案するには、人の感性の数値化が必要だ」―。TOTOバスクリエイト(千葉県佐倉市)の橋口裕昭社長は強調する。人の感性を数値化して開発した「シンラ」は、デザインと機能を融合した。

 体内部の負担量から“脱力感”を捉える技術や体表面で感じる“包まれ感”を捉える技術を採用。浴槽が体を支える点と接触面積を増やすことによって、安定した姿勢を保てる形を追求した。橋口社長は「シンラは新しい入浴文化を創りつつある」と胸を張る。

 シンラを製造するTOTOバスクリエイトは、佐倉工場(千葉県佐倉市)と赤穂工場(兵庫県赤穂市)の二つの生産拠点を持つ。佐倉工場では、立体自動倉庫や6台の大型プレス機を所有し、24時間体制で生産している。

素材にこだわり


 新商品の「シンラ」も含めて、浴槽の形を生み出すプレス成型の工程では、熱硬化性樹脂を130―150度Cに熱した金型に投入し、約1500トンの圧力で成型するとツヤのあるきれいな浴槽ができあがる。浴槽や浴室の床には、耐熱性や耐溶剤性のある熱硬化樹脂を使用している。

 一つのユニットバスに使用する壁は7―8枚。壁側面を折り曲げるロールフォーミングや、床・天井面の折り曲げ加工の天地しぼりなど、1枚の壁の曲げ加工は15秒で完了する一方、水密性を高めるため、100分の1ミリメートルの精度が求められる作業だ。

 成型後はロボットによる浴槽加工に続いて、ピッキングシステムで部品を顧客の仕様に合わせて確実にそろえる。工場で浴槽や床、壁、天井など構成部品・部材をそろえて梱包(こんぽう)し、出荷する。橋口社長は「浴槽のデザインや照明、素材にもこだわり、新しいバスタイムを提案する」と力を込める。

累計出荷1000万台


 TOTOでは3月に「ユニットバスルーム」の累計出荷台数が1000万台を突破した。1963年に日本初となる「ユニットバスルーム」を開発。64年の東京オリンピック開催に伴い、ホテルニューオータニへ大量の浴室工事を短納期で完了させるためだった。今では当初のホテルから住宅やマンション向けに拡大し、新しい浴室文化の提案を進める。
日刊工業新聞2018年11月27日

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