若手起業家たちの挑戦はマイナー・アマチュアスポーツを変えるか

【連載】突破せよ・スポーツ×ベンチャー(4)

ookamiの尾形太陽社長(左)とventusの小林泰CEO

 若手起業家たちがマイナー・アマチュアスポーツを変えようとしている。お金がなかなか循環しないマイナースポーツなどの世界で、ファンとのつながりを強めたり、チームや選手に収益を還元したりできるサービスを構築し、利用者を拡大するベンチャー企業が出てきた。    2014年に創業したookami(オオカミ、東京都世田谷区)はスマートフォンアプリ「Player!(プレイヤー!)」を運用。プロからアマチュア・学生スポーツまで数十種目の試合のライブ情報をテキストで配信する。一方、17年に現役の東大生が創業したventus(ヴェンタス、東京都渋谷区)はスポーツチームや選手の電子トレーディングカード取引サービス「whooop!(フープ!)」を展開している。両者の代表に事業立ち上げの経緯やスポーツビジネスに対する思いを聞いた。  ―プレイヤー!の特徴を教えてください。  スポーツの試合が盛り上がっている瞬間を(プッシュ通知などで)教え、利用者同士がその瞬間を共有できるサービスです。試合の情報をテキストでライブ配信し、利用者がコメントしたりスタンプを押したりできる機能を設けることでコミュニティーの熱量を視覚化しています。プロスポーツだけでなく、アマチュアスポーツのライブ情報も数多く配信している点が最大の優位点。ほかに情報収集できるサービスがないため、高い集客力があります。また、コンテンツとして未開拓な分野でビジネスの可能性があると考えています。学生スポーツなどは平日の日中に行われており、テレビで放送されません。現地にいけない親やOB・OGなどにとって知りえなかったライブ情報を知ることができます。  ―アマチュアスポーツのライブ情報をどのように配信しているのですか。  自社で速報を運営する体制を整えているほか、試合情報を簡易に管理できる自社ツールを競技団体やチームなどに無料で提供しています。この管理ツールはチームのホームページや会員制交流サイト(SNS)と連携できます。例えば大学スポーツは現地のマネージャーなどが試合中にSNSなどで試合情報を投稿しています。我々のツールはその負荷を軽減し、より多くのファンにリーチできる手段として使ってもらっています。  ―自社ツールは無料とのことですが、どのように売り上げを上げているのですか。  資金調達がうまくいっていることもあり、今は先行投資の期間と位置づけ、売り上げは上げていません。現在はコンテンツを増やして利用者を拡大することに注力しています。一方で収益化の方法は実験しており、広告モデルや利用者コミュニティーの課金モデルを考えています。  ―コンテンツを増やすほかにサービスの課題はありますか。  スポーツ界にないと困るサービスになり切れるかがカギです。プレイヤー!で情報配信できることを喜んでくれる人は増えていますが、なくなったら困るというほどのサービスにはなりきれてはいません。そこはコンテンツフォルダー(であるチームや選手など)に利益を還元できるモデルが作れるかが重要と考えています。それによってファンとチームの間でお金が回る仕組みの構築を目指します。  ―そもそもなぜスポーツビジネスで起業したのですか。  もともと起業したい思いがあり、人生をかけて挑戦できる領域を選ぶことが重要だと考えていました。スポーツほど一つの瞬間の感動を国境や世代を超えて共有できるコンテンツはありません。一方で、日本のスポーツビジネスは産業化できていないため、困っている選手や競技団体、不便な思いをしているファンがいます。そのため開拓する意義があると考えました。  ―フープ!を立ち上げた経緯を教えてください。  私は東大のアイスホッケー部で活動していたのですが、アイスホッケーは練習場所が少なく深夜にしか練習ができませんでした。そうしたマイナースポーツゆえの環境が個人的には気に入らず、アイスホッケーのファンを増やす手段を考えました。そこでマイナースポーツのチームこそSNSなどを活用してコンテンツを出すことが大事と考え、関東大学リーグの試合のライブ動画配信をはじめました。2014年頃のことです。それは今も続けているのですが、なかなかキャッシュポイントが作りづらいと感じました。この経験から、マイナースポーツのチームが資金を調達できる仕組みに関心をもち、そのための事業モデルを考えていく中で「電子トレカ」に行き着きました。  ―なぜ「電子トレカ」だったのですか。  スポーツ業界でもうけるには、まずゲーム性が必要と考えました。例えばベッティングは感情論で悪いという主張があるかもしれませんが、我々は決して悪いとは思いません。チームを応援している時点で気持ちはベットしているので。また、チームを支えるファンにとっていつから応援してきたという履歴を証明できる仕組みがよいと思いました。それが昔からあるものの再発明だったということです。スマホのソーシャルゲームでは電子上のアイテムの獲得・収集に熱心な利用者がたくさんいます。そう考えるとトレカの電子化にも違和感はないと思いました。  ―10月にサイクルロードレースやサッカーJFLなど16チーム・団体での採用を発表(11月26日に追加でJリーグ5チームの採用も発表)していますが、各チームのサービスに対する期待はどんなところにありますか。  スポーツチームは収入源をいかに増やすかという問題意識を抱えており、その対応策として期待されています。電子トレカは選手の写真を提供してもらえれば作れます。ほかに初期コストはかかりません。今は1枚300円で販売しており、その収益の90%をチームに還元します。また、「電子トレカ」がファンとのつながりを強める明確な手段になり得ると捉えられています。  ―現在の機能としてはカードを収集したり、利用者同士で売買したりできる機能がありますが、今後どのようにゲーム性を高めていきますか。  リーグに所属するチームすべてをカード化する体制を整えて(架空のスポーツチームを作成するシミュレーションゲームの)ファンタジースポーツのようなものができるようにしたいです。ただ、そこに行き着く前の段階としてカードを通じてファンとチームの間で強いつながりが起きないといけません。それにはチームによるカード購入者を対象にしたイベントや特典の企画が必要です。我々のビジネスがうまくいくかどうかはそこが肝だと思います。  ―カードを発行するチーム側の力も問われそうですね。  各チームと協議していきます。カードを発行しているチーム同士が意見交換できる環境なども整備し、知見を共有し合って全体が盛り上がれるようにしたいです。 (この連載は葭本隆太が担当しました)

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