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100万件の遺伝サンプルもとに長寿の秘密探求、グーグル傘下のキャリコ

遺伝子検査サービス会社と提携、医薬品開発へ
100万件の遺伝サンプルもとに長寿の秘密探求、グーグル傘下のキャリコ

Jane Ades/NHGRI (www.genome.gov)

 米グーグルの関連会社が長寿研究に本格的に乗り出すことになった。グーグル傘下で医療研究を行うキャリコ(Calico、カリフォルニア州)は、一般向けに遺伝子検査サービスを行うアンセストリーDNA(ユタ州)と提携したと21日に発表。アンセストリーの100万を超える顧客の遺伝サンプルと数百万の家系データをもとに、極めて長寿な人の遺伝要因を突き止め、老化や老化関連の病気の発生を抑え、長寿を促進する治療薬の研究開発につなげるという。

 キャリコは、CEOのアーサー・レビンソン氏とグーグルが2013年に設立。ベンチャーキャピタリストでもあるレビンソン氏は、現アップル会長でもあり、バイオベンチャーのパイオニアとして有名な米ジェネンテック(ロシュ傘下)の元CEOというシリコンバレー/ベイエリアの大物実業家。報道によれば、グーグルはこれまでに7億3000万ドルをキャリコに投資しているという。また、アンセストリーは、遺伝子検査により、人種の混合度合いや、先祖が世界のどこの地域から来たのか、親族との遺伝的な関係性を調べたりするサービスを提供している。

 一方で、アンセストリーはグーグルが出資する遺伝子検査会社23アンドミーのライバルでもある。さらに23アンドミーは、グーグルの共同創業者サーゲイ・ブリン氏の元妻のアン・ウォジュシッキ氏がCEOで、1月には3000人のパーキンソン病患者の全ゲノム配列を読み取り、治療標的を明らかにするプロジェクトでジェネンテックと提携している。プレーヤーが入り組んだ関係にあるものの、それだけグーグルおよび関係者がライフサイエンス分野を重要視している証ともいえる。
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藤元正
藤元正 Fujimoto Tadashi
ビッグデータの手法で遺伝子を解析し、長寿の秘密を遺伝子レベルで解析するのは非常に意味のある研究だと思う。ただ、関連遺伝子が見つかったとしても、その機能を促進したり、あるいは減退させたりする医薬品を作れるかどうかは別問題。所定の効能が得られなかったり副作用が出たりして、臨床段階でほとんどの試みが失敗するからだ。というわけで、長生きしたい人は日頃から健康に気をつけて、革新的な研究成果の登場を首を長くして待つ、ということになるでしょう。

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