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「折り畳みスマホ」普及なるか。日本企業は素材・部品に商機?

中韓勢が投入発表、日本勢は参入未定も準備進む
「折り畳みスマホ」普及なるか。日本企業は素材・部品に商機?

サムスンが来年投入を発表した折り畳みスマホのイメージ(同社公式動画より)

 閉じればスマートフォン、開けばタブレット端末になる「折り畳みスマホ」(フォルダブルフォン)が2019年から市場に本格投入される。頭打ちが著しいスマホ市場に新風を吹き込むか注目だ。日系の化学や電子部品メーカーにとっても商機になりそうだ。

次世代の主力に


 「(スマホの)新たな次元を切り開く」―。サムスン電子米国法人のジャスティン・デニソン上級副社長は7日、米国のイベントで折り畳みスマホを19年に投入する考えを表明した。韓国の聯合ニュースによると、サムスンの折り畳みスマホは「ギャラクシーF」と仮称され、200万ウォン(約20万円)程度で同年3月末の販売を目指している。

 ディスプレーには数十万回折り畳んでも劣化しない「インフィニティ・フレックス・ディスプレー」と呼ばれる最新技術を活用。画面サイズは折り畳むと4・58インチ、広げると7・3インチになる。基本ソフト(OS)には米グーグルの「アンドロイド」を採用し、最大三つのアプリを実行できる「マルチタスク」機能も搭載する。

 折り畳みスマホは、機能・デザインの両面から次期スマホの主力とされる。足元のスマホ市場は世界全体で出荷台数が17年から減少に転じ、18年も減少が続く見通しの中、折り畳みスマホの市場規模は、20年には500万台規模に拡大するとの予想もある。世界最大手のサムスンが動くことで、停滞するスマホ市場の起爆剤になることが期待される。

 サムスン以外の企業も参入に意欲的だ。サムスンに先駆けて折り畳みスマホを発表した中国の新興メーカーの柔宇科技(ロヨル)は、18年中にも約14万円台から市場投入する。さらに中国・華為技術(ファーウェイ)も19年の販売を準備しているという。

 中韓メーカーの動きが目立つ中で、日本勢はどうか。ソニーが「エクスペリア」の次期モデルで折り畳みスマホを投入するという観測もあるが、ソニー自体は「ノーコメント」(広報)の立場だ。

 一方、12月に自社生産の有機ELディスプレーを搭載したスマホを発売するシャープ。10月の国内最大の家電・IT見本市「シーテック」では、深く曲がった有機ELディスプレーを参考出品し、折り畳みスマホを投入する可能性を示唆した。

 次期主力スマホと期待される折り畳みスマホだが、普及のカギの一つは価格帯にある。現在、スマホ市場の数量が伸び悩む分、各メーカーは高機能化による単価引き上げを進めている。折り畳みスマホも高価格路線になるのは確実だ。

 サムスンのように価格が20万円前後となれば、高級パソコンやデジタルカメラなどと肩を並べる。果たしてメーカー側の強気の価格設定に、消費者がどこまでついて来られるのか。スマホとタブレットの2台持ちの解消というメリット以外の独自コンテンツなど、付加価値をいかに提供できるかが勝負となりそうだ。

 20年には第5世代通信(5G)の商用サービスが始まる。現在の4GLTEの100倍の高速通信が可能で、4Kなど大容量の高精細映像を携帯端末で楽しめる。折り畳みスマホが成功するには、こうした動きをうまく取り込む必要がある。
「シーテック」で参考出品したシャープの曲がる有機ELディスプレー

停滞市場の起爆剤!?


 折り畳み式スマホの登場はディスプレー材料を手がける化学メーカーにとって渡りに船だ。新商品サイクルの短いスマホ部材は顧客からの値下げ圧力が強く、売価下落が常に悩みの種だ。折り畳みスマホが普及すれば、従来のガラスから樹脂フィルムへの置き換えに加えて、難易度の高い形状変化は利幅の拡大につながる。

 住友化学は折り畳み式スマホ向けウインドーフィルムの量産を準備中。19年にも発売される端末への採用が見込まれ、偏光フィルムやタッチセンサーパネルに次ぐ有機EL部材事業の新たな柱に育てる考えだ。「これだけ品ぞろえしているのは我々だけ。その強みを追求していく」(住友化学幹部)。

 宇部興産はサムスングループと11年から有機ELパネルの基板材料で合弁事業を展開中だ。今後フィルムの採用が広がることから、東ソーや三菱ガス化学も、それぞれ得意な樹脂技術を生かして折り畳み式や折り曲げ式スマホ部材市場への参入を目指している。

 偏光板など、ディスプレー用の光学フィルムで世界トップシェアを持つ日東電工も、10万回以上の曲げに耐えられるフィルムなどを開発ずみ。同社の成長をけん引してきたスマホ市場が成熟化する中、新たな収益源として期待する。

 電子部品メーカーでは村田製作所が圧電フィルムを使ったフレキシブルセンサーを開発中だ。圧電性を備えた透明なフィルム上に電極パターンを形成することで、つまみ、曲げ、ねじりといった操作で発生する電圧の大きさを検知し、音量の上げ下げやテレビのチャンネル変更などの機能を付与できる。

 11年に三井化学、関西大学とセンサー感度の高い圧電フィルムを開発しており、今回もこれを使用。当時は一つのフィルムに一つのセンサーしか付けられなかったことから、複数センサーを取り付けられるようにする。

 柔らかくフレキシブルに曲がるため筐(きょう)体に対応できるほか、山折り・谷折りにも対応できるため、折り畳みスマホなどでの需要を見込む。
(特別取材班)
日刊工業新聞2018年11月14日

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