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大規模災害の対応で約3万8000時間を削減、RPA導入で成果を実感する損保各社

大規模災害の対応の効率化を目指す
 損保ジャパン日本興亜は、大規模災害時におけるソフトウエアロボットによる業務自動化(RPA)で、2018年度の単純な事務の削減時間が計約3万8000時間に上ることが分かった。同社は膨大な事務を必要とする災害時の保険金支払い業務で、RPAの導入を推進する。今回、単純事務を大幅に減らせたことで、顧客対応など、より付加価値の高い業務に人員を充てられるなどの効果があったようだ。同業大手も災害時のRPA活用を本格化しており、業界の課題だった災害対応が前進しそうだ。

 損保ジャパン日本興亜は、6月の大阪府北部地震で初めて事故情報の印刷や損害調査の進捗(しんちょく)状況の入力にRPAを導入し、7月の西日本豪雨でも契約情報の確認と自動印刷にRPAを使用した。同社が今月12日までにまとめたRPAの導入効果よると、大阪府北部地震における業務の削減量は450時間、西日本豪雨は120時間だった。

 さらに、同社はこれら二つの自然災害でRPAの効果が確認できたとし、開発を継続。請求書類の発送や保険金支払いに必要な登録作業に使うRPAを配備した。

 その後発生した台風20号、21号、24号は家屋などへの被害が大きく、設置した対策本部でRPAを運用。これら三つの台風は保険金の支払いが完了していないため実績は確定していないが、合計3万7500時間を削減できる見込みだ。中でも請求書類の発送は1万1000時間と最大で、顧客の契約確認が9000時間と次いで多かった。

 同社のRPA導入に関する詳細な効果検証はこれからだが、単純事務の削減により、災害対応の人員を減らせた上、電話による顧客案内といった人でないとできない業務に多くの人員を割くことができたと見ている。

 大規模な自然災害では契約者からの事故連絡や事務、損害調査が集中し保険金の支払いに時間がかかる場合が多い。さらに、災害対応の人員を増やすことで、他業務へのしわ寄せも大きく、これらの効率化は各社が抱える課題だ。

 各社は自社の基幹システムに合わせながら独自のRPA開発を推進し、災害時の単純事務を圧縮する。

 東京海上日動火災保険は手間のかかる大容量ファイルの自動ダウンロードなどにRPAを活用する。

 三井住友海上火災保険は、専用ウェブサイトで顧客から受け付けた事故連絡をRPAが自動登録。人の作業に比べて、処理速度は10倍程度早くなったという。あいおいニッセイ同和損害保険も顧客の契約情報の確認などにRPAを導入。大幅な人員削減効果を確認している。
          
日刊工業新聞2018年11月13日

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