顧客増加や資金調達、SDGsを経営メリットにつなげるには?

11月29日、SDGs勉強会を開催

大川印刷の「SDGsを忘れないメモ」

 「持続可能な開発目標(SDGs)」が産業界に知られるようになった。経営や事業への活用となると大企業が先行するが、SDGsに着目して競争力を付けている中小企業も出できた。行政や地域の金融機関もSDGsを基準に企業支援を始めており、中小企業も事業を通したSDGsへの取り組みが経営メリットになろうとしている。  SDGsは2015年9月の国連総会で採択された世界共通目標。社会、環境、経済の課題を解決した30年の“未来像”を目標として描いた。健康、教育、エネルギーなど分野別に17のゴールと具体策を示した169のターゲットがある。国連は現状と“未来像”とのギャップを埋めるため、企業に事業活動による課題解決を要請。企業は市場予測や新事業の開発にSDGsを活用できる。  従業員約40人の大川印刷(横浜市戸塚区)は18年度、20社以上の新規顧客を獲得した。1881年(明14)の創業から地元・横浜で印刷業を営んできた同社にとって大幅な増加だ。同社のSDGsの取り組みを知った企業から声がかかった。  好評なのが「SDGsを忘れないメモ」だ。メモ用紙裏面に「1.貧困をなくそう」「2.飢餓をゼロ」などのSDGsの目標別のアイコン(絵文字)が描かれている。メモ書きをして1枚めくるたびにアイコンが目に入る。  大川印刷はSDGsの認知度アップに貢献しようと製作した。行政などのイベントで無料配布されるうちに話題となり、社員へのSDGs教育に使いたい企業から注文が入るようになった。SDGsがきっかけとなり、新規顧客と結びついた。  もともと同社はCSRを経営の基軸にしており、大川哲郎社長は「印刷を生かした社会課題解決があるはずだ。社員には『印刷の仕事をしたいならCSRをしなさい』と言ってきた」という。  紙製リングで紙をくくった卓上カレンダーも課題解決の視点から生まれた自社製品だ。リングが金属だと廃棄時に取り外す手間があるが、紙製なら分離せずにリサイクルへ回せる。生態系や地域社会に配慮した森林資源の利用を示す「FSC」認証の紙を使用。目に不自由がある人でも読みやすいデザインにもした。  外資系企業の目にとまり、公式カレンダーに選ばれた。CSRを重視する外資企業のビジョンとカレンダーのモノづくりが一致し、新規取引が始まった。  また別の外資系企業からはFSC認証紙を大量に使用していることが評価され、1500万円の受注を獲得した。CSRにこだわる姿勢が共感され、利益につながっている。  いまはSDGsを経営計画に採り入れてCSR経営を強化している。メモ帳以外でも「SDGsに熱心だから」という理由で発注が入るようになった。大川社長は「社会から評価されて従業員の意識も高まった。SDGsは従業員教育にもなる」と実感を込めて語る。 <次ページ:行政の支援施策続々> ======= 「わが社のSDGS勉強会-スモールスタートで始める、企業活動に役立つSDGs」 【日時等】:2018年11月29日(木)16:30~18:00(Q&Aは18:30まで)     ※事前申込制・無料 【会 場】:千葉商科大学1号館1階 1101教室(千葉県市川市) 【主 催】:千葉商科大学、日刊工業新聞社   >>>FAXでもお申込みができます(上記サイト、背景が黄色のリーフレットPDFより) ========  SDGsを中小企業の実益につなげようと行政も支援する。経済産業省関東経済産業局は5月、長野県とともに「地域SDGsコンソーシアム」を立ち上げた。地元経済団体、地銀、信用金庫、県立大学も主なメンバーとなり、中小企業が参入できる地域課題解決型の事業を創出する。  大企業ではSDGsの活用が進む。課題解決が市場獲得につながると理解しているからだ。しかし中小企業は鈍い。社会課題と利益を結びつけた事業を考える余裕がないからだ。そこでコンソーシアム(共同事業体)は利益と直結する課題を示しビジネスモデルを提案する。金融機関も金融支援を設計し、中小企業が参入しやすい環境を整える。中小企業が地域で新事業を始めると自治体にも税収や雇用で恩恵がある。地域課題解決は住民サービスであり、中小企業が主体となった地方創生へと発展する。  コンソーシアムは7月と9月にも会合を開き、参加者からは「SDGsに取り組む必要性をわかりやすく整理することが重要」といった指摘が出た。19年3月まで会合を重ねて報告書をまとめる。関東経産局は長野県をモデルに他地域への展開も目指す。  中小企業にSDGsの必要性を理解してもらおうと環境省は「SDGs活用ガイド」を発行した。地域経済を支える中小企業の目線からわかりやすく構成したという。同省ホームページからダウンロードできる。  ガイドではSDGs活用で広がる「四つの可能性」をまとめている。「企業イメージの向上」「新たな事業機会の創出」は経営メリットであり、大川印刷の事例が該当する。「社会の課題への対応」「生存戦略になる」は取り組みが遅れることでのリスクだ。  大企業は今後、調達先にSDGsの推進を働きかけてくる可能性がある。実際に積水ハウスの石田建一常務執行役員は「SDGs調達を考えている」と公言する。中小企業はSDGsを推進すると継続的な取引が期待できる。逆に怠ると取引先から対応を迫られる。外資企業から取引停止も突きつけられる恐れもある。  資金調達もSDGsのわかりやすいメリットだ。SDGsを基準とした金融メニューをつくる地銀が増えている。滋賀銀行はSDGsに賛同して社会課題解決に取り組む企業への低金利融資を始め、水浄化システム開発のウイルステージ(滋賀県草津市)に融資した。埼玉りそな銀行、八十二銀行、北洋銀行も投融資で中小企業のSDGsへの取り組みを支援する。  中小企業はSDGsを意識した経営をしていると資金調達で有利になる。SDGsの活用に損はなく、得となることが多い。  千葉商科大学と日刊工業新聞社は、SDGsを経営・事業に活用したい企業などを支援する「わが社のSDGs勉強会」を始めます。全3回を予定し、初回は11月29日、千葉商科大学で開催します。幅広い企業の方が「わが社らしく、経営・事業にプラスとなる」SDGsを学び、活動をスタートする場にします。 ======= 「わが社のSDGS勉強会-スモールスタートで始める、企業活動に役立つSDGs」 【日時等】:2018年11月29日(木)16:30~18:00(Q&Aは18:30まで)     ※事前申込制・無料 【会 場】:千葉商科大学1号館1階 1101教室(千葉県市川市) 【主 催】:千葉商科大学、日刊工業新聞社   >>>FAXでもお申込みができます(上記サイト、背景が黄色のリーフレットPDFより) ========

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