IT投資で拡大で成長する消火設備ビジネス

コーアツ、ガス式の利点で好機

広々としたフロアでガス式消火設備を製造する

 コーアツ(兵庫県伊丹市、脇田勇社長、072・782・8561)は、ガス式消火設備で推定35%の国内シェアを握る。5月には待望の三田工場(兵庫県三田市)も稼働した。ガスは水や粉末による消火に比べ、対象物を損壊しにくい。半導体工場やデータセンターなどの精密設備を火災から守るのにも適しており、IT投資の増加で成長の好機をつかんでいる。  コーアツは容器(ボンベ)に窒素を中心とする超高圧ガスを充填(じゅうてん)し、起動すると放出するガス式消火設備でトップクラス。当初は舶用の二酸化炭素(CO2)式で事業を始めた。その後、主力のガスは消火能力に優れたハロン(フロンの一種)に代わった。しかし、オゾン層破壊物質としてハロンが規制されると、業界初の窒素式を開発。ガス種は時代ごとに交代したが「常に業界でトップランナーを走ってきた」(中垣隆司取締役三田工場長)と自負する。  半導体工場やデータセンターでは、窒素で消火し設備の破損を防ぐリスク管理の意識が高まっている。美術品を所蔵する美術館や博物館、外資系ビルでも窒素ガスの採用が増えている。  消火設備は法令で性能や点検を厳しく規制される。強みの要はガス濃度を正しく保ち、確実に放出する容器弁(バルブ)。自社で設計・製造し、容器をはじめ最大100点の部品から消火設備を組み立てる。高耐久・高強度でも肉厚が薄く軽量な配管を使い、消火区画の広さや状況に合わせ、制御盤や火災感知器なども含む消火システムを提案できるのが強みだ。  ただ、本社にある伊丹工場は手狭で老朽化していた。「倉庫の中で作っているようだった。顧客との立ち会いスペースも満足に取れない。近隣住民からは騒音や光害の苦情も寄せられていた」(中垣工場長)という。  移転先を長年探し続け14年に三田市でようやく適地を見つけた。都市や鉄道の駅から離れたが敷地面積は2万9200平方メートルとゆとりがあった。同社は総額25億円を投じ、そこに三田工場を建て、伊丹工場での生産を移管した。時期は未定だが、消火ガスの試験や顧客と消火実験をする滋賀研究所(滋賀県湖南市)も三田工場に移す予定だ。  三田工場は製造と倉庫の建屋を完全に分離。工場内の物流をスムーズにした。部品の自動倉庫や自動洗浄機など省人化を高める大型装置も導入。「伊丹工場は弁を年間3万個製造していたが三田工場は生産能力を同5万個に引き上げた」(中垣工場長)。  また三田工場には「低酸素体験室」も設けた。顧客らに入室してもらい、消火ガスの窒素を室内に放出して、酸素濃度を体に安全な約12%へ下げる。室内は息苦しくならないが、テスト用のライターを着火しようとしてもつかない。酸素濃度が15%を切ると、燃焼の化学反応が止まるためだ。窒素の無毒性と消火の原理を実感できる。製造工程も顧客が見学しやすいように配置した。念願の新工場で一段と競争力を高める。 (文=田井茂)

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