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「IoT環境を整備しないと、日本の産業は立ちかなくなる」

日本工作機械工業会(日工会)の飯村幸生会長インタビュー
 世界の製造業を取り巻く景色が急速に変わりつつある。少子高齢といった社会的要因と、IoT(モノのインターネット)や人工知能(AI)、工程集約・自動化といった製造技術の革新などによるものだ。工作機械など生産財各社は、変革の時代に何を工場に提供しようとしているのか。11月1日に開幕する工作機械の世界的展示会「日本国際工作機械見本市(JIMTOF2018)」で方向性がわかるはずだ。主催者である日本工作機械工業会(日工会)の飯村幸生会長に聞いた。

 ―IoTは顧客や工作機械メーカーの競争力を維持、向上させるのに欠かせない技術になりそうです。

 「IoTは機械の稼働状況、生産進捗(しんちょく)の見える化、生産履歴管理、故障の事前予防などが第一歩。これが進むとAIの出番だ。機械のある音が異常か否かの判定には閾値(しきいち)が必要。閾値の設定には機械に取り付けたセンサーで音を拾うなどしたデジタルデータが欠かせず、データ収集にはIoTが必要だ。こうした環境を整備しないと、日本の産業は立ちゆかなくなると危惧する」

 ―にもかかわらず、顧客側から分かりづらいとの声が漏れます。

 「主催者の企画展示として、会場を一つの大きな工場に見立て、約70社・300台超の工作機械を産業通信用データ通信規格『OPC UA』ベースの基盤(プラットフォーム)でつなげる。同じダッシュボードで、各メーカーの機械の情報がみられる。欧米の主要展示会にもない初の試みだろう。同じプラットフォーム上にさまざまなメーカーの機械が、問題なくつながることを見ていただき、つながることが、もう難しくはないと実感してもらいたい」

 ―日本は少子高齢が進み、就労人口の減少が課題です。製造業への関心が薄れるのにも歯止めをかけなければなりません。

 「米国はモノづくりを回帰させようとしているが人が入ってこない。金融業界には目が向くが、『重力がかかる仕事は嫌』と担い手を確保するのが難しいという。当社(東芝機械)の現地販売店が顧客に、機械とオペレーターをセットで入れて欲しいと言われたそうだ。その点、日本は少子高齢化の課題先進国だが、モノづくりはまだ地に足が着いている。今回のJIMTOFでは学生280人を招待する。2006年に始め、今回は最大の人数を予定している」

日本工作機械工業会会長・飯村幸生氏

(聞き手・六笠友和)
日刊工業新聞2018年10月10日
六笠友和
六笠友和 Mukasa Tomokazu 編集局経済部 編集委員
大テーマのIoTについて、各社のブースでは2年前の前回JIMTOFからの進化に注目したい。工作機械をつないで何ができるかという付加価値は「メーカーの競争領域」(飯村会長)であり、工作機械を選定する要点の一つにこれから育ちうる。変革の時代だからこそ会場を訪れ、次代を知ることの重要度が増している。

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