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パーキンソン病治療に降圧剤、患者iPSで候補薬を特定

慶大などの共同研究
パーキンソン病治療に降圧剤、患者iPSで候補薬を特定

(写真はイメージ)

 慶応義塾大学医学部生理学教室の岡野栄之教授、神山淳准教授らは、パーキンソン病患者由来のiPS細胞(人工多能性幹細胞)を用いて、治療薬候補として高血圧の治療薬(降圧剤)を特定した。神経細胞に発現するカルシウムの輸送経路(チャネル)に作用し、細胞内へのカルシウム流入を阻害することで細胞死を抑制していた。治療薬の開発に応用が期待される。エーザイとの共同研究で、成果は19日、米科学誌ステム・セル・リポーツ電子版に掲載される。

 研究チームは、遺伝子異常があるパーキンソン病患者由来のiPS細胞から、神経伝達物質「ドーパミン」を放出する神経細胞「ドーパミン作動性ニューロン」を作製。このドーパミン作動性ニューロンを調べると、細胞外のカルシウムを細胞内に取り込むカルシウムチャネルが多く発現していた。

 こうした患者の神経細胞の特徴をもとに、既に使われている薬剤1000種類以上の中から治療薬の候補を探索すると、カルシウムチャネルに阻害作用があり、高血圧などの治療に使われる化合物が特定された。この化合物で細胞内へのカルシウム流入を阻害すると、ストレスにより誘発されるドーパミン作動性ニューロンの細胞死は抑制された。

 パーキンソン病は、手足の震えなどの症状が生じる神経変性疾患。ヒトの病態を再現した動物モデルがなく、病態解明や治療薬の開発が困難だった。

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