【連載#3】「再生エネ買えない」で、外資企業が日本から撤退

連載「脱炭素経営 パリ協定時代の成長戦略」

 気候変動枠組み条約締約会議(COP)の開催地に海外企業が集結し、経営トップが発言している情報が日本に伝わるようになったのは、2015年末のパリでのCOP21が最初だろう。自然エネルギー財団の大野輝之常務理事は「海外企業は脱炭素に抵抗せず、チャンスとして前向きに捉えていた。日本企業はびっくりしたはずだ」と語る。  以前、二酸化炭素(CO2)削減はエネルギー使用の制約になるため、企業は反対してきた。15年当時、日本の産業界もCO2排出の大幅な削減に消極的だった。経済団体系シンクタンクが、30年に13年比26%削減する日本の温室効果ガス削減目標を「柔軟に見直せ」と提言するほどだった。  国内外で再生可能エネルギーへの認識にも開きがあった。日本で再生エネは「不安定で高価で使いづらい」が常識。しかし海外では太陽光パネルや風力発電設備のコストが急速に下がり、企業が経済合理性から再生エネ電気を選ぶようになっていた。  英蘭ユニリーバはCOP21直前、購入する電気すべてを再生エネ由来にすると宣言した。温暖化が進み、自然災害が多発して消費者の生活が脅かされると、同社の日用品の販売に悪影響が出る。原材料を調達できなくなり、商品の製造にも支障が出る。こうした気候変動がおよぼすリスクを回避し、事業を持続可能にするため自ら脱炭素へ舵を切り、世界にも取り組みの強化を訴えた。  その同社グループで最も早く再生エネ100%を達成したのが日本だった。日本法人は15年、再生エネを使ったとみなせる「グリーン電力証書」を購入し、国内の工場や研究所の電気全量を再生エネ化した。ユニリーバ・ジャパン・ホールディングスの新名司マネジャーは「日本をきっかけに海外拠点でも証書の活用が始まった」といい、日本が先進事例を示した。  COP21でパリ協定採択後、海外企業の取り組みは加速する。米アップルは18年春、日本を含めた全世界で再生エネ100%化を達成した。「再生エネ100%は無理」と思っていた日本の常識も崩れた。  こうした外資の活発な動向に自治体が危機感を抱くようになった。  8月下旬のシンポジウムで、横浜市温暖化対策統括本部の大倉紀彰企画調整部担当部長は「企業が安い再生エネを調達できる地域を選んで進出するようになったら、どうするのか」と訴えた。現状でも日本の再生エネは少量で高価なまま。再生エネの調達環境が改善されないと日本から外資企業が撤退する可能性を示唆した。  海外企業の脱炭素宣言はパフォーマンスと受け取られがちだった。しかし自然エネルギー財団の大野常務理事は「お化粧ではなく、ビジネスになった」と強調する。

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