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苦境にあえぐ紙業界で生まれた“墨がにじまない御朱印帳”

早和製本、営業では書道セットを持参して性能を披露
苦境にあえぐ紙業界で生まれた“墨がにじまない御朱印帳”

販売中の「墨が裏面に染み出ない御朱印帳」

**“御朱印ブーム”機能性で勝負
 「遠慮せんともっと筆に墨汁をつけて書いて下さい」。早和製本(京都市南区、075・693・3131)の津岡正男社長は自信に満ちた表情で促す。同社はこのほど、裏面に墨がしみ出ない御朱印帳を開発した。昨今はペーパーレス化に苦しむ紙業界。反転攻勢を模索する企業の1社だ。

 同社が主に扱う製品は伝票などの事務用紙。「かつては“手堅い”と言われていた」と津岡社長は振り返る。しかし、現在はデジタル化の波を受け、紙の需要が急激に落ち込んでいる。同社の売上高も5年前と比べて、約2割減少した。

 そこで新規分野として注目したのが、以前から製作相談のあった御朱印帳だ。“御朱印ブーム”も受け、小売店でも御朱印帳を見かける機会は多い。

 ただ他社との類似製品では埋没してしまう。「機能性で勝負しよう」(津岡社長)と、和紙に特殊なはっ水加工を施し、裏面への墨のしみだしを防いだ。営業でも「実際に体験してもらうのが一番」(同)と、書道セットを持っていく。

 大量生産にも対応できるよう、和紙をロールで仕入れる。ロールから和紙を加工する際にシワが出ない技術も高めた。御朱印帳の製造に合った設備を整えるため、約1500万円を投じた。

 「墨が裏面に染み出ない御朱印帳」の価格は消費税抜きで2000円から。販路は小売店やネット通販。オーダーメード製品の相談は親会社の野崎印刷紙業が対応する。2020年には月1万冊の売り上げを目標にする。
(文=京都・日下宗大)
日刊工業新聞2018年10月12日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
既成概念に縛られないデザインの御朱印帳を見かける機会が増えました。外装の美しさに目を惹かれがちですが、御朱印を求める人にとってはきれいに残せる技術の方がありがたいように思います。

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