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楽天が高校生と考えた地方創生プログラム、出てきたアイデアとは?

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楽天が高校生と考えた地方創生プログラム、出てきたアイデアとは?

課題について話し合う高校生と楽天社員

 楽天は高校生と同社社員が一緒に地域課題の解決策を考えるプログラム「Rakuten IT School NEXT」を始めた。
高校生はアイデアの発想方法を学びながら、地元の課題や魅力を認識できる。楽天にとって地方創生はSDGs(持続可能な開発目標)の取り組みであり、社員が自社の技術・サービスが地域課題解決に貢献する潜在力があることに気づく機会となる。

 岩手県立水沢商業高校、熊本県立熊本商業高校など10校の生徒137人が参加し、8月3日から各地でプログラムが始まった。初日はそれぞれの地域課題を議論、翌日は住民などにインタビューし、最終日に解決策を発表した。楽天社員45人も10校に分かれ3日間、高校生と解決策を練った。

 インタビューを重ねるうちに想定した課題から離れていくことがある。耕作放棄地を議論した広島県立油木高校のチームは「若者の農業離れ」が課題と思っていたが、放棄地の草刈りにかかる費用も住民の悩みと分かった。そこで高校生は草刈りを条件に参加できる「耕作放棄地キャンプフェス」を考えた。草刈りの課題を解決し、若者が農業に興味を持つきっかけにもする。


 楽天の技術やサービスを活用した解決策も考えた。福島県立ふたば未来学園高校のチームは「双葉郡のにぎわい回復」を目標に楽天のアプリケーションを使って地域を巡るスタンプラリーを発案した。

 楽天から飛騨市役所に出向中の舩坂香菜子マネージャーは「高校生から『地域を身近に感じた』と言われた」と3日間を振り返る。普段の生活だと気づかない地域の魅力や課題に目を向けるきっかけになったようだ。

 プログラムを担当する楽天ソーシャルイノベーションチームの崎村奏子アシスタントマネージャーは「社員の気づきにもなった」と語る。自社の技術・サービスの思いもよらない使われ方を知り、仕事が社会に役立つと確認できたからだ。


 いまはアイデアを練り直す期間で、12月の楽天本社での最終発表会に向けて高校生は解決策を再検討している。参加した社員にも気軽に相談の連絡が来るという。サステナビリティ推進部の眞々部貴之マネージャーは「関係性を作れた」と語る。

 楽天は2008年から商業高校245校で電子商取引の出前授業を開いてきたが、教えて終わるだけの一方通行になりがちだった。社員が高校生とともに考える今回の形式であれば、地域と密接な関係を持ち、事業のヒントも得られる。「楽天には70以上のサービスがある。多様な人材も含め地域で使えるアセットは豊富」(眞々部マネージャー)と、事業を通した地方創生を推進する。
(文・松木喬)
2018/10/11
松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
出前授業形式では7000人近い高校生が受講したそうです。今回取材の「NEXT」は、Eコマースに限定せず、また課題も特定せず、楽天のアセットを使って解決策を練ります。幅広く地域にリーチでき、多様な貢献ができます。ファシリテーターとなる社員も事前に3日間、研修を受けたてのぞんだそうです。どんな成果発表会になるのか、楽しみです。

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