ニュースイッチ

伝統工芸で魅せる“香りの日本文化”

アーティスト舘鼻則孝の創作の原点に触れる
伝統工芸で魅せる“香りの日本文化”

今回の展覧会の中心となる「THEORY OF THE ELEMENTS」(ノリタカタテハナ提供


 アーティストの舘鼻則孝氏による展覧会「―NORITAKA TATEHANA RETHINK―THEORY OF THE ELEMENTS」が14日まで「Basement GINZA」(東京都中央区)で開催されている。

 舘鼻氏は、9月にも3日間限定公開した「NORITAKA TATEHANA RETHINK―舘鼻則孝と香りの日本文化―」を開催している。

 本展では、展覧会名にもなっている作品「THEORY OF THE ELEMENTS」を中心に、同氏の代表作品と“香りの日本文化”にまつわる作品群で構成されている。日本各地の伝統工芸士との創作活動の中から生まれて来た作品の数々は、厳選された素材とそれを扱う職人の手仕事によって完成した。富山県高岡市の「螺鈿(らでん)細工」や石川県輪島市の「蒔絵(まきえ)技法」など日本各地の伝統工芸の技術を用いて制作された作品が並んでいる。

 中心となる作品「THEORY OF THE ELEMENTS」は、鮑(あわび)貝を用いた螺鈿細工と漆調の溜塗(ためぬり)によって仕上げられた煙管(きせる)。今回、協賛するJTの加熱式たばこのコンセプト「RETHINK(視点を変えて考える)」に共感し、遊女の煙管から着想を得た。

 舘鼻氏は、世界的に活躍するアーティストのレディー・ガガが着用したことでも話題となった「HEEL―LESS SHOES」などを手がけている。その作品づくりの原点に、日本の伝統工芸があるという。

 東京芸術大学では、絵画や彫刻を学び、後年は染織を専攻した。その大学時代に、日本伝統文化を学び、自身が「江戸のアバンギャルドとも言うべきだ」と言い表す花魁(おいらん)のファッションについて研究した。卒業制作として発表した作品で、遊女の履く高げたを現代的な解釈で表現したのが、ヒールレスシューズだ。それは同氏にとって「古来より受け継がれる日本の文化を現代へ翻訳したように、意味を持った作品となった」という。さらに「明治期以降、西洋化された現代日本を生きる私たちには見直すべき文化がある」と続ける。

 創作活動において、日本文化の土台とも言うべき工芸が根本にあり、未来に向けてそれらをどう進化させるかが重要だと考える。

 この展覧会では、舘鼻氏が伝統工芸士の職人の技術を生かし、未来を見据えて日本の文化を構築する姿に触れられる。
舘鼻氏の代表作「HEEL―LESS SHOES」(ノリタカタテハナ提供)
日刊工業新聞2018年10月12日

編集部のおすすめ