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伸銅品の問屋が抱える問題とは

東京都伸銅品商業組合理事長・山崎洋一郎氏インタビュー
伸銅品の問屋が抱える問題とは

東京都伸銅品商業組合理事長 山崎洋一郎氏

 ―自動車向けを中心に銅板条などの伸銅品需要が高水準で推移しています。

 「需給のタイト感は足元でも緩んでいない。若干だがスマートフォン向けの薄板需要が落ち着いて、一部の品種のひも付き(特定需要家向け)では以前の(供給が極度に追いつかない)パニックのような状態は解消されている。ただ、それを埋めるように車載コネクター向け需要などが堅調に推移し、問屋の一般品在庫は欠品が続いている状況だ」

 ―銅相場の急落による在庫の価格下落が懸念されます。

 「需給が逼迫(ひっぱく)していることで在庫量は少なく、むしろ問屋まで伸銅品が流れてきていない方が問題は大きい。また、当組合では問屋間で商品を融通しているので、在庫を過剰に持たなくて済む。今後も緩やかなネットワークを築いていければ会員問屋が増えて業界の発展にもつながる」

 ―中長期的には少子高齢化などによる国内マーケットの縮小が懸念されます。

 「メーカーが海外に進出して国内に経営資源を割けなくなる時に、問屋は材料の細かな国内供給をしっかりカバーして産業を支える役割を担えるはずだ。その際には問屋ごとの特性を生かし、電気自動車(EV)などの新製品向けの材料供給や伸銅品の加工販売など付加価値の高いサービスを提供していくことが商機となる」

 ―問屋の対応策は。

 「単に伸銅品を売るだけでなく、その材料がどのように製品に使われるのかなど技術的に一歩踏み込んだ営業が必要だ。当組合ではメーカーとともに技術講習会を開いて知見を高めており、図面の読み方の講義などは好評だった。また、ベンチャー企業などは試作品を作りたくても材料の調達先が分からないことが多い。事業者に対して扉を広く開けて問い合わせに対応することも、今後の課題となるだろう」

 ―問屋の事業承継も課題です。

 「後継者候補のサポートが必要だ。先日は当組合の青年部に対し、私の事業承継の経験談を話した。規模の小さい問屋が多く、経営者の相談相手が少ないことも課題だ。技術講習会や工場見学会を通じて交流を深め、当組合が大規模組織の役割を担うことで事業承継の円滑化につながると期待している」
日刊工業新聞2018年9月20日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
スマホを始めとした製品サイクルの加速化や需給の急激な変動などにより、問屋の顧客となる部品メーカーのリスクも高まっている。急速に変化する経済環境下で、伸銅品の安定供給や新製品向けの材料提案などにより日本のモノづくりをサポートしていけるか。問屋間のネットワークを生かす一方で、互いに競い合いながらサービス力を高められるかもカギとなりそうだ。(田中明夫)

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