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海洋汚染の原因・プラスチックゴミ削減へ、生分解プラが増産体制

カネカや東洋紡など
 海洋汚染などで問題になっているプラスチックゴミを削減する動きを受け、化学メーカーも石油由来ではなく植物由来で微生物によって分解される生分解性プラに力を入れ始めた。

 カネカは欧州を中心に使い捨てプラ削減の規制が強化される中、高砂工業所(兵庫県高砂市)の生分解性プラの製造設備を増強する。25億円を投じ製造設備の年産能力を現状比5倍の約5000トンに増やし、19年に稼働予定だ。生分解性プラの需要拡大に対応する。

 同社の生分解性プラは植物由来で土・海中の微生物により分解できる。フランスなどでは生ゴミ類を処理するコンポスト(堆肥)袋への採用が進み、同社製品の販売量が拡大。世界的に意識が高まる微細なプラのゴミ「マイクロプラスチック」の海洋汚染問題も背景に、今後は海洋資材や食品包装などへの用途拡大も見据える。新たに年産能力2万トン規模の新プラントも検討中だ。

 東洋紡は米デュポンが開発した生分解性ポリエステル樹脂「APEXA(アペクサ)」の製造を受託し、岩国事業所(山口県岩国市)で生産対応を始めた。アペクサは東洋紡が独自開発した重金属を含まないアルミニウム系の触媒を使用し、適切な堆肥環境下で微生物の力により水と二酸化炭素(CO2)に分解できる。生分解させると、焼却する場合に比べてCO2の排出量を抑えられ、今後の需要拡大が期待できる。現在はスポーツ衣料やユニホームなどの繊維用途が中心だが、今後は包装用フィルムなどにも用途を広げる予定だ。

 三菱ケミカルは生分解性プラ「バイオPBS」を用いたストローを試作した。タイの合弁相手であるPTTグローバルケミカルのポリ乳酸系樹脂と組み合わせて実現した。バイオPBSは海洋分解性を有する半面、単体では強度などが課題だった。

 今後は世界大手コーヒーチェーンやファストフードチェーンのほか、ストローメーカーなどに試作品をサンプル提供していく。樹脂の用途を広げてバイオ素材の拡販を目指す。
(文=大原佑美子、鈴木岳志)
日刊工業新聞2018年9月5日
永里善彦
永里善彦 Nagasato Yoshihiko
環境省が第5次環境基本計画で謳っている、世界の潮流としてのSDGs(持続可能な開発目標)やESG(環境・社会・企業統治)対策は、今後、企業の存続に関わる重要な課題となってきた。原料調達や環境対策が企業の価値を左右する。その意味で、海洋汚染を起こすプラスチックゴミの対策は格好のテーマである。多くの化学会社は、植物由来で微生物によって分解される生分解性プラスチックの開発/利活用が企業のブランド価値を高めるものとして認識している。各社の競争はさらに激化しよう。

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