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気象情報をビジネスに利用して!気象庁がビッグデータ提供

年間市場370億円程度で伸び悩む気象事業の新展開を図る
 気象庁は2019年度から、産業利用に向けた気象のビッグデータ(大量データ)を提供する事業を始める。地域気象観測システム「アメダス」や気象台の過去数十年の気象データを、コンピューターが読み取り自動処理できる形にする。これにより小売りや運輸、観光などの企業が、独自のビジネスデータと合わせた分析モデルを開発できるようになる。19年度予算概算要求は5000万円。年間市場370億円程度で伸び悩む気象事業の新展開を図る。

 現在、気象庁はホームページで気温、降水量、日照、風、湿度、気圧などのリアルタイム観測データを公表している。人が操作し閲覧するため、現在の状況把握はできてもビッグデータに対応できない。また気象庁から気象業務支援センターを経て民間気象事業者、さらに商社や小売業などで活用される場合も同様の問題がある。新事業では推計を含む過去50年などのデータを機械可読式で提供する。例えばタクシー会社であれば自社の過去の営業データと、対応する期間・地域の気象庁の気象データをあわせて解析し、配車の最適モデルを開発。その後、気象庁のリアルタイムデータを入力することで日々、顧客を取りこぼさず配車指示を出せる。「1日1台当たり1400円の収益増」との総務省の試算もあるという。

 気象ビッグデータはクラウド上に置き、一括ダウンロードと自動処理が可能な形にする。各社の秘匿データとの組み合わせやビジネスの応用は、産学官連携の「気象ビジネス推進コンソーシアム」で支援していく。
日刊工業新聞2018年8月30日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
ビッグデータは教育、研究、ビジネスとすべての領域での1大トピックスだ。記事では気象情報のビジネス利用を挙げたが、気象と影響する自然科学はもちろん、産業に関わる社会科学系の大学でも活用できる。経営、観光、地域創生などの学部から、気象ビッグデータを活用するユニークな教育や研究が出てくれば、「文系学部不要論」など一蹴できることだろう。

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