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自動運転、次のステージへ。東京都心で世界初となる営業走行

ZMP・日の丸交通、自動運転タクシー実証
 自動運転技術を手がけるベンチャー、ZMP(東京都文京区)と日の丸交通(同)は27日、自動運転車両によるタクシー運行の実証実験を始めた。自動運転システムを搭載したタクシーが乗客を乗せ、公道を営業走行するのは世界初という。両社は実証実験を重ね、2020年の東京五輪・パラリンピックまでに実用化を目指す。(渡辺光太、国広伽奈子)

タクシー利用が多いルート実験


 今回の実験地域は日中の交通量が多い大手町フィナンシャルシティグランキューブ(東京都千代田区)―六本木ヒルズ(東京都港区)間。ハンドルやアクセル、ブレーキ操作などを自動で行うトヨタ自動車のミニバンが同区間を往復する。事前予約制で、実験は9月8日まで実施する。最近は訪日外国人らのタクシー利用が多いルートであり、日の丸交通の富田和孝社長は「需要はあるものの、人手不足のため機会損失になっていた」と語る。同社は自動運転車を導入することで、車両の稼働率を最大限まで高める考えだ。

適切なルート


 実験で利用する自動運転システムはZMPが開発。20年の実用化を狙っており、西村明浩取締役は「課題は技術的なデータの取得だ」と分析する。レーザーセンサーやカメラを搭載することで対向車や白線、信号機などを把握。高精度地図の事前情報とセンサーで取得したリアルタイム情報を照合し、適切なルートの走行を可能にした。ソフト面では同社の知見のほか、日の丸交通の運転手のアドバイスを受けて円滑な運転技術を確立した。法定速度を正確に維持しつつ、車線変更なども問題なくできるようにした。

 27日に行われたオープニングセレモニーでは事業者のほか東京都や三菱地所、森ビルなども参加。三菱地所の千葉太執行役常務は「大手町・丸の内・有楽町を最先端のビジネス街にするため、乗り心地や利用状況などのデータを集め今後の検討に生かす」と説明。実験に協力した森ビルの小笠原正彦取締役常務執行役員は「都市のインフラの変化を体感できる絶好の機会。全力を挙げてサポートしたい」と期待を寄せた。

海外でも着々


 公道での自動運転車の実証実験は、愛知県でアイサンテクノロジーやティアフォー(名古屋市中村区)が試験を実施している。3月に実験中の事故を起こした米ウーバー・テクノロジーズも8月から実験を再開すると発表。中国検索大手の百度(バイドゥ)は18年度内に中国のバス大手と実証実験を終え、自動運転バスの実用化を進める。これまでは大学の実験施設や特別な条件下での実証実験が目立っていたが、今後は営業やサービスなどにつながる公道実験にシフトするとみられる。
日刊工業新聞2018年8月28日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
実際に乗ってきました。多くの車両が行き交う公道を、スムーズな車線変更や加減速で安全性は十分、実感することが出来ました。乗り心地という面では「かっくん」ブレーキが若干ありましたが、実験を重ねることで向上するそうです。

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