首位奪還へ、富士通がCPUで示した「ポスト京」への前進

一つの命令でたくさんのデータを同時に処理

ポスト京の頭脳となるCPU(右)とメモリーユニット

 富士通は、2021年頃に世界最高水準を目指す次世代スーパーコンピューター「ポスト京」(通称)の頭脳となる中央演算処理装置(CPU)「A64FX」の仕様を、米国で開催された国際学会で22日に初公開した。A64FXは英アームと共同開発したスパコン向けの新型64ビットプロセッサーで、ピーク性能は2・7テラフロップス(テラは1兆、フロップスは浮動小数点演算性能)以上。ポスト京ではこれを数万個規模で接続し、エクサ(100京)スケールの計算能力を実現する。  A64FXはこれまで試作段階での公開にとどまっていたが、国際学会「ホットチップス」という公式な場で、頭脳を担うCPUの仕様や性能などの詳細を明らかにした。まずはCPUレベルで「ポスト京の開発にめどがついた」(丸山拓巳富士通AI基盤事業本部シニアディレクター)ことを国内外に示した。  A64FXはアーム仕様の「Arm8―A命令セット」を世界で初めてスパコン向けに拡張した「SVE(スケーラブル・ベクター・エクステンション)」アーキテクチャー(設計概念)を採用。アームが協業しているオープンソースなどの開発コミュニティーや膨大なソフトウエア資産を活用できる。  富士通は、11年に世界最速となったスパコン「京」では高性能サーバーで実績を持つ「スパーク」プロセッサーをベースに独自にCPUを作り込んでいた。後継機となる「ポスト京」ではCPUをスパークからアームに切り替える。長年培ってきたハードウエア技術を含む広範な知財(IP)を結集し、理化学研究所とのタッグで首位奪還に挑む。  今回公開した仕様によると、A64FXは演算処理を担うコア数が48個。演算以外に、割り込み処理などを担う専用のアシスタントコアが4個。トランジスタ数は約87億個。線幅7ナノメートル(ナノは10億分の1)の超微細プロセス技術を採用した。  目玉となるSVEは、一つの命令でたくさんのデータを同時に処理する「SIMD」機能が特徴。ピーク演算能力の2・7テラフロップスは「京コンピューターに比べて20倍以上、システム全体ではアプリケーション性能が最大100倍となる」(丸山シニアディレクター)という。  CPU内には高速メモリー「HBM2」が直付けされており、処理能力を左右するピークメモリーバンド幅は毎秒1024ギガバイト(ギガは10億)と高速。実行効率はベンチマークで80%以上を確認した。さらにビッグデータや人工知能(AI)向けに、新たに16ビット整数、8ビット整数の演算性能も強化した。  高性能CPUで課題となる消費電力の管理について工夫し、ソフトウエアからハードウエアに対して電力を抑える指示ができる機能なども実装した。CPU同士を結ぶインターコネクト技術には富士通独自の「Tofu」を継承するが、新型CPUに合わせて早ければ9月中に次世代版を発表する予定。

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